ー広汎性発達障害とうつ病の併発で障害厚生年金3級の認定、遡及請求の事例ー
1. 基本情報
- 年代:40代
- 障害の種類:チック障害、うつ病、広汎性発達障害
- 年金の種類:障害厚生年金
- 等級:3級
2. 申請前の状況
■ 発症から治療までの経過
請求人様は幼少期から対人関係の構築に困難があり、周囲との関わり方に偏りが見られました。
他人の意図を理解することが難しく、集団行動の中で孤立する傾向が続いていました。
社会人になってからも、業務上の細かい指示が理解できず、仕事の手順や報連相(報告・連絡・相談)に苦手さがありました。職場でのストレスが増えると、首や顔面のチック症状(不随意な動き)が悪化し、他人の視線に強い不安を感じるようになりました。
このような環境下でうつ状態が進行し、不眠、食欲低下、強い倦怠感、希死念慮などが出現。精神科で「うつ病」「広汎性発達障害」「チック障害」と診断され、投薬治療と休職指導を受けました。
診断書作成時点では、抑うつ気分、意欲低下、不眠、興味関心の喪失が顕著で、
仕事を続けることができず、自宅で臥床して過ごす日が多くありました。
家族以外との交流はほとんどなく、入浴や食事といった基本的な生活行為にも助言や指導が必要な状態。
自傷行為の危険性があり、家族が常に見守る必要がありました。
診断書では、「日常生活能力の判定」で金銭管理・社会性・安全保持のいずれも「助言や指導をしてもできない」とされ、
「日常生活能力の程度」は「多くの援助が必要」と評価されていました。
■就労状況
障害発症前は一般雇用で勤務していましたが、ミスが増加し、同僚や上司との関係悪化から休職。
短時間勤務で復職を試みたものの、症状が再び悪化し再休職に至りました。
出勤を続けることが心身ともに困難となり、主治医から「長時間労働は不可能」との診断を受けました。
■申請を決意したきっかけ
症状が慢性化し、再就職の目途も立たない中で、経済的な不安を軽減し、治療に専念するために障害年金の申請を決意。
特に、「発達障害の特性がもとにあるうつ症状」として、障害認定日時点の状態からの遡及請求を目指しました。
3.申請の経緯
■初診日の確認
初診日は、精神的な不調(不眠や抑うつ)が出現して医療機関を受診した時点とされました。
受診証明書と医療機関の診療録により、初診日が厚生年金被保険者期間中であることが確認されました。
■申請時の課題
本件の最大の課題は、複数の精神疾患を総合的に評価し、障害認定日時点で障害厚生年金3級に該当することを立証する点でした。
発達障害やチック障害の特性は知能指数や外見からは判断されにくく、医師の診断書だけでは社会的制限の実態が伝わりにくい傾向があります。
■医師との連携・必要書類の整備
主治医には、発達障害による社会性の欠如、チック症状による外見的ストレス、うつ病による意欲低下の相互作用を明確に記載してもらいました。
また、病歴・就労状況等申立書では、職場での具体的な困難を次のように整理しました:
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指示を理解できずミスを繰り返した
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社内の人間関係に適応できず孤立した
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チック症状により緊張が高まり作業継続が困難
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自己判断で薬をやめて悪化、再通院を繰り返す
これらの内容が、労働能力の著しい制限を示す重要な根拠となりました。
4. 当事務所のサポート内容
当事務所では、精神疾患・発達障害の併存事例において、以下の支援を提供しました。
■ 総合的な障害状態の整理
診断名を単独で評価するのではなく、「広汎性発達障害」を基盤に、「チック障害」や「うつ病」が上乗せ的に重なり、
社会的行動・就労能力に大きな制限を与えている構造を整理しました。
■ 医師との情報共有と記載助言
医師に対し、障害認定日における実態の聞き取り書類を共有。
「家族の援助がなければ通院・服薬・金銭管理ができない」「出勤が継続できない」など、実際の困難を明確に記述しました。
■ 申立書・添付資料の作成支援
病歴・就労状況等申立書では、本人の努力にもかかわらず日常生活が維持できなかった経緯を、
医療記録・家族の証言・職場の休職履歴を基に具体的に記述しました。
5. 結果と現在の状況
■結果
初回申請の結果、申請者様の障害認定日における障害の程度は、障害厚生年金3級に該当と認定されました。
障害認定日に遡って支給が決定しました。
■受給内容
報酬比例部分を基礎とする障害厚生年金3級の年金が支給され、
遡及分については一時金としてまとめて支給されました。
■生活の変化
障害年金の受給により、経済的不安が軽減され、継続的な治療と生活リズムの安定が可能に。
現在は医療機関での支援と家族の協力のもと、社会復帰を目指してリハビリを継続中です。
6. 申請を検討している方へのメッセージ
広汎性発達障害やチック障害、うつ病などの併存疾患は、診断名が複数あるため申請が複雑になりがちです。
しかし、障害年金の認定基準では、複数の疾患を個別に評価せず、全体としての日常生活や労働制限を総合的に判断します。
「IQが高いから対象外だと思っていた」
「会社を辞めたけど病名が複数で整理できない」
――そんな方でも、症状の実態を正確に示すことで、初回申請から認定を得ることが可能です。
障害年金は、努力や我慢では補えない“生活上の制限”を正当に評価する制度です。
自分の障害特性を客観的に伝えることができれば、あなたの努力が正しく報われます。
あなたの生活の困難さを、制度の言葉に変えるお手伝いをいたします。
