目次
1.基本情報
- 年代:50代
- 障害の種類:うつ病
- 年金の種類: 障害厚生年金
- 等級:3級
2. 申請前の状況
申請者様は、家庭内トラブルをきっかけに抑うつ状態となり、過呼吸発作も起こすようになりました。その後、いくつかの医療機関を受診・転院しながら治療を続けていましたが、長男の件で状況が一変し、体調を崩し、不眠や気分の落ち込み、思考がまとまらない状態となりました。この悪化を受けて、新たな主治医のいる医療機関に転医されました。
それ以前にも、精神科の受診歴があり、定期的に通院し、不眠治療として薬物療法を受けていた時期がありました。この期間は、仕事と家事を両立し、資格取得や新築なども経験し、生活が充実していたと認識されていました。しかし、その後、症状悪化が顕著になり、抗精神病薬が初めて処方されるほどの状態になりました。
3.申請の経緯
障害年金の申請を検討されていましたが、いつの初診日が適切なのか特定が難しい状態でした。症状の悪化が顕著になり再度受診した時は厚生年金に加入していましたが、それ以前の初診日は国民年金に加入されている期間でした。
症状が悪化して受診した日を初診日と認められるためには、それ以前の精神科受診歴が「治癒している」とみなされ、「同一傷病」でないと認められる、社会的治癒が認められる必要があるケースでした。
4.当事務所のサポート内容
当事務所は、本件最大の争点である「初診日の特定」と「社会的治癒」の立証に全力を注ぎました。
「社会的治癒」の主張
申請者様が過去にうつ状態と診断され通院していた時期があったものの、その後、長期にわたり症状が安定し、通常の日常生活や就労(厚生年金加入期間を含む)を送っていた期間があったことを強調しました。この期間を「外見上治癒していると認められる状態」としての社会的治癒があったと主張し、その後の顕著な症状悪化を「再燃」または「再発」と位置づけ、その日を新たな初診日とすべきと論じました。
具体的な生活状況と就労の実態
社会的治癒期間中の生活が、再婚、新築、資格取得(難関資格)、子供の部活動応援、友人とカラオケといった充実した状況であったこと、また仕事ではケアマネージャーとして多忙な業務をこなし、無遅刻無欠勤で勤務し、収入も上がっていたことを具体的に示しました。
投薬状況の分析
社会的治癒期間中の投薬が、不眠薬の維持量または下限に近い少量であり、通常使用量よりもはるかに少ない量であったことを医師の見解を添えて説明し、これが「日常生活にあまり支障を与えない治療」であったことを立証しました。
過去の裁決例の引用
継続的に通院していても、維持量の投薬があっても、また厚生年金の被保険者期間が長くても社会的治癒が認められた裁決例があることを示し、本件にも適用されるべきと主張しました。
現在の症状悪化の明確化
症状悪化(思考・運動制止、憂うつ気分、喜びの喪失、罪悪感、食欲不振、易怒性など)が以前とは質的に異なり、抗精神病薬の処方が始まったことを示し、これが「再発」であることを補強しました。
5.結果と現在の状況
本事例は、障害年金申請代行における「社会的治癒」という、複雑で困難な課題の一つを克服した事例です。
当事務所は、過去の受診状況や治療経過を詳細に分析し、「社会的治癒」の概念を適用できるかを慎重に検討しました。
申請者様やご家族からの詳細な聞き取りに加え、当時の生活状況を裏付けるタイムカードや写真、資格取得証明書、職場の同僚からの申立書など、多岐にわたる客観的な資料を収集・整理しました。これらの資料に基づき、症状が安定し、通常の社会生活が送れていた期間が存在したことを具体的に証明しました。さらに、過去の裁決例を引用しながら、社会的治癒の要件を十分に満たしていることを論理的に主張しました。
結果として、 社会的治癒の主張により、厚生年金保険の被保険者であった期間を初診日として、障害厚生年金3級が認められました。 この事例は社会的治癒による初診日特定という大きな壁を乗り越えたことを意味し、今後の障害年金受給への道が開かれた点で、申請者様の生活に大きな希望をもたらしました。
6.申請を検討している方へのメッセージ
障害年金申請において、過去の病歴が複雑で初診日の特定が困難なケースは少なくありません。特に、一度症状が落ち着き、社会生活を送っていた期間がある場合、それが『社会的治癒』と認められるかどうかが重要なポイントになります。当事務所では、診断書だけでなく、当時の就労状況、治療内容、日常生活の具体的な様子を示す多様な資料を集め、過去の裁決例も踏まえながら、社会的治癒が認められうるか、初診日の認定を目指します。初診日の規定が難しい方も、ぜひ一度、障害年金申請代行の専門家にご相談ください。複雑な事案でも、適切な証拠と論理であなたの権利を守ります。
