目次
― 初診日特定が困難な中、複数資料による立証で認定に至ったケース ―
1. 基本情報
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年代:40代
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障害の種類:躁うつ病
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年金の種類:障害厚生年金
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等級:2級
2. 申請前の状況
申請者様は、うつ状態が出現したことを契機に心療内科を受診し、治療を開始しました。当初は抑うつ気分や意欲低下、不眠、易疲労感が中心でしたが、治療を継続しても症状は改善せず、次第に慢性化していきました。
その後、職場での勤務を続けることが困難となり退職。実家に戻って療養生活を送っていましたが、ある時期から気分高揚・多弁・多動といった躁状態も出現し、躁うつ病の症状を繰り返すようになりました。
症状が重い時期には、強い希死念慮により入院治療を必要とし、退院後も訪問看護やヘルパーによる生活支援が欠かせない状態が続いていました。
抑うつ状態と躁状態が交互に出現するため、日常生活の維持は著しく困難でした。家事全般や身の回りのことにも母親の介助が必要であり、家族の支援なくしては生活が成立しない状況でした。
抑うつ期には食欲不振や無気力により外出できず、躁状態では衝動的な行動がみられるなど、生活全般に支障をきたしていました。退院後も安定した状態を保つことが難しく、精神的な支援と見守りが常に必要でした。
大学院卒業後、専門職として勤務していましたが、体調不良が長期化したため休職を繰り返し、最終的に退職しました。以後は症状の波が大きく、再就職を試みても継続できず、長期にわたり就労困難な状態が続きました。
慢性的な症状の悪化と入退院の繰り返し、日常生活での大きな支援の必要性、そして経済的不安から、障害年金の申請を決意されました。就労が難しい状況の中で、年金による生活支援が必要不可欠と判断されたためです。
3. 申請の経緯
初診日の特定
本件では、初診日の認定が最も重要な争点となりました。
申請者様は、躁うつ病の初診日が厚生年金加入期間中であると主張しましたが、初診当時の診療録が既に破棄されており、直接的な証拠が存在しませんでした。
そこで、以下のような複数の間接資料を提出しました。
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精神科医師による診断書(病歴および治療経過の記載)
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受診状況等証明書(初診年月日を記載したもの)
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病歴・就労状況等申立書(本人の記憶に基づく初診日記載)
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患者登録システム画面の写し(初診算定日・最終来院日)
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友人2名による第三者証明(受診当時の体調不良や通院事実の証言)
社会保険審査機関では、これらの資料を総合的に勘案した結果、請求人の主張する初診日が合理的に認められると判断され、厚生年金被保険者期間中の受診が初診日として認定されました。
この判断は、直接的なカルテがなくても、複数の客観的資料を組み合わせて初診日を推認することが可能であるという実務上の考え方に基づくものです。
医師との連携・書類準備
主治医による診断書には、長期的な症状の変動、躁病エピソード、入退院歴、訪問看護やヘルパーの利用状況、希死念慮などが詳細に記載されていました。
特に「日常生活能力の判定」では、平均3.0程度と評価され、家族の援助がなければ身の回りのことも難しい状態が明確に示されていました。
また、医療記録が残っていない部分については、第三者証明や医師の意見書を補強資料として提出し、初診日の合理的推認につなげました。
4. 当事務所のサポート内容
当事務所では、初診日の立証や症状の重さの裏付けが難しいケースに対し、以下のような総合的支援を行いました。
初診日特定の戦略的支援
過去の医療機関の受診履歴、健康診断記録、処方履歴、保険証の使用記録、当時の通院費支払い記録など、初診日を示す可能性のある資料を徹底的に調査しました。
医療機関の廃院や転院があった場合も、後継医院や保険者を通じて可能な範囲で情報を取得し、主張を裏付ける証拠を整えました。
第三者証明の作成支援
発病当時を知る友人や家族に依頼し、「いつ・どのような状態で通院していたか」を具体的に記載してもらうよう指導しました。
形式的な証言ではなく、当時の出来事や具体的な様子が伝わる内容にすることで、証明力を高めました。
書類全体の整合性確認
病歴・就労状況等申立書、診断書、第三者証明の内容に矛盾が生じないよう、全体の整合性を確認。審査官が理解しやすい時系列構成を整えました。
5. 結果と現在の状況
認定結果
初診日が厚生年金被保険者期間内であると認められ、さらに障害の状態が国民年金法施行令別表に定める2級相当と判断されました。
これにより、障害基礎年金および障害厚生年金2級の受給が決定し、裁定請求日を受給権発生日として認定されました。
経済的効果
障害基礎年金2級は定額(年間約80万円前後)、障害厚生年金2級は報酬比例部分に応じて支給されます。これにより、請求人様の経済的基盤が安定し、生活および治療を継続できる環境が確保されました。
生活の変化
障害年金の受給により、訪問看護・ヘルパーなどの支援サービスを継続的に利用できるようになり、再発防止のための通院・服薬治療にも集中できるようになりました。
経済的な安心が得られたことで、治療意欲の向上や生活リズムの安定にもつながっています。
6. 申請を検討している方へのメッセージ
躁うつ病などの精神疾患は、症状に波があり、「元気な時期があるから対象外だと思っていた」という誤解から申請をためらう方も少なくありません。
また、長期経過により初診日の証明が困難なケースも多くあります。
しかし、診療録がなくても、間接資料や第三者証明を組み合わせることで初診日を認めてもらえる可能性は十分にあります。
重要なのは、事実関係を整理し、合理的な説明ができるよう専門家のサポートを受けることです。
当事務所では、初診日特定・症状の立証・医師連携を一貫してサポートし、あなたのケースに最適な申請方法をご提案します。
一人で悩まず、まずはご相談ください。あなたの病状と生活実態に即した正当な受給を、共に実現していきましょう。
