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2019/06/28更新
精神科医のコラム7/8【発達障害の方が社会と付き合うための有効な方法】
発達障害の方が社会と付き合うための有効な方法
あなたは、人が好きですか?
人間関係が上手にできるかどうかはこの際問題ありません。あなたは、「人と接すること」が好きですか?
まず、それを考えてみましょう。
「人付き合いは上手じゃないけど、それでも人と接することは好き」なのか、それとも、「人付き合いはある程度いけるかもしれないけど、根本的には人と接することが好きではない」のか。
少し、自問自答してみましょう。まずは、そこを考えるところからです。なんとなくでもいいので、自分の中でこうかな?という答えが見つかったら、この先を読み進めてください。
人は一人では生きていけない。
人は一人で生きていくことはできません。もしあなたがフリーランスで、自宅で起業していたとしても、全く人と繋がらずに生きていくことは不可能です。
取引先、買い物に出た先、お金を使うとき、全く人と接しないことは不可能です。
極端な話に思えるかもしれませんが、それでも、「人は一人では生きていけない」ということを、あくまでの大前提として覚えておいてください。
「人が好きじゃない」のであれば、出来るだけ対人関係を避けて生きていくことができる。
「苦手なことをする」ことは、ストレスになります。そのストレスは、ひとつひとつは些細なことかもしれませんが、チリが積もれば山になるのと同じで、徐々にあなたを蝕んでいきます。
もし、「人と接すること自体が好きではない」のであれば、出来るだけ対人関係を避けていきていける道を選びましょう。
もちろん、最低限の支援者を遠ざけてはいけません。でも、同じ「仕事」でも、「接客業」なのか、「黙々とパソコンにデータを入力する作業」なのかで、ストレスは変わってきます。
適材適所、という言葉があります。「人と接することが好きでない」のであれば、極力人と接することを避けて生きていけるような人生を選んでいきましょう。
それでも、仕事をする、作業所に通う、それだけであなたは社会の中で十分に価値があります。人と同じことをしなくていいのです。自分の得意なことは、他人の苦手なことである可能性も十分にあり得ます。
「人が好き」だとしたら、ひょっとしたらトラウマレベルの嫌なことを抱えてしまうかも。
「人と付き合うのは得意じゃないけど、でも人と付き合うのが好き」という人の場合、人の中で生きていくことには「抵抗」はないかもしれません。
ただ、やはり発達障害を抱えている場合、「対人トラブル」を抱えやすいです。これも「ストレス」になります。
仕事としては、先ほどと同じように自分の得意なことを活かせばいいと思いますが、「ストレス」から二次障害になってしまう可能性が「人が好きじゃない」人より少し高いかもしれません。
調子が少しでもおかしいかも、と思った時はすぐに信頼できる人に頼りましょう。
誰かの助けは借りないといけない。
支援者がいる人もいるでしょう。もちろん支援者の力は頼れるだけ頼ってもらって構いません。でも、支援者を持たない人も、苦手なことは誰かに頼っていいのです。
料理が苦手だから配食サービスを使うことも、人を頼ることです。ただしそうやって「上手に人に頼って」行けば、「苦手なこと」を抱えすぎてのストレスは減っていくのだと思います。そうすると、社会と関わることでの「ストレス」に少し強くなることができます。
苦手なことを無理にやることはない。得意なことをやって生きていこう。
先ほどは配食サービスの例を出しましたが、掃除が苦手であれば家事代行サービスを使うことができます。もし、グループホームなどで生活していたり、ヘルパーさんが入っていたりしたら、そういう苦手なところを担ってくれるかもしれません。
でももし「掃除はストレス発散できる」「料理が楽しい」という場合は、無理に人を頼ることはありません。
得意なことは自分でやる。苦手なことは人を頼る。
これに尽きます。ただし、苦手なことを「全部」人に頼ることはできません。少しの苦手はやっていかないといけないこともあるでしょう。
ストレスはコップに水が溜まっていくように溜まります。そして、溢れてしまうと二次障害が出てしまうのです。ストレスを発散して水を減らすのも大事ですが、そもそもたまらないようにすることも大事です。
日常生活で苦手なことを人に頼ることで、社会と関わる上でどうしても避けられない「ストレス」だけが「ストレス」として残り、コップの水があふれにくくなります。
自信を失わずに、自尊心を大事にして生きていこう。
一番伝えたいのは、「あなたはあなた自身で価値がある」ということです。あなたはあなたのままで構いません。そのままで十分魅力的な人です。
苦手なことを克服したいと思う気持ちは尊重されるべきですし、支援者も応援してくれるでしょう。しかし、無理にすべてに立ち向かう必要はありません。
無理をすることで、どんどん「自信」が失われていきます。そのことが最も避けるべきことです。「自分に自信を持つ」ことは、これまでの人生でたくさん傷ついてきた発達障害の人にとっては難しいことかもしれません。
でも、「自信を持って」欲しいのです。幸せに生きる権利は、誰にだってあります。
世の中の理解は広がっている。あなたに合う人も、職場も、きっとたくさんある。
あなたは今まで、いろいろな人に拒絶されてきたかもしれません。身内にも、発達障害を受け入れてもらえず虐げられてきたかもしれません。
しかし今、発達障害に対する世の中の理解も、精神障害者を雇用していかなければいけないという流れも、起こってきています。
あなたに合う職場、あなたに合う人、きっと見つかります。あなたが引きこもらずに社会に関わろうとしてくれれば。
「うまくいかないこと」は「すべて相手のせい」ではない。
ただし、「うまくいかないこと」は全てが「世の中の理解がないせい」「相手が自分をわかってくれないせい」ではありません。
もちろん、理解してくれない人も、わかってくれない人もたくさんいます。でもそれは誰でもそうなのです。
そしてもちろん健常者の人でも、人付き合いで間違いを犯すことをあり得ること。もし何か嫌な思いをしたら、信頼できる誰かと振り返ってみましょう。
あなたが改善できるところが見つかるかもしれないし、あなたは何も悪くないかもしれない。
ただし「一人で考えない、結論を出さない」ことです。これは支援者の人や主治医の先生でも構いませんし、理解してくれる家族でも構いません。誰かと一緒に考えてみましょう。
そうすると冷静な判断ができます。
少しずつ成長しながら、苦手なことが苦手でなくなることもあります。
発達障害は、「発達しない」わけではありません、得意なことと苦手なことの落差が激しくて、人より成長のスピードがゆっくりなだけで「成長していく」ことができます。
成長することで、「苦手だったこと」が苦手じゃなくなること、普通にできるようになることもありますし、発達障害「らしさ」が薄まっていくことも十分にあり得ます。
だから、今できないことを全て諦める必要もないのです。あなたはあなたのペースで成長していく。「諦めない」ことが大事です。
人と違うことは、悪いことじゃない。誰も困らなければ、それは「個性」でいい。
もし成長していった結果、「薬が全く必要なく」なって、苦手なことを変わってくれるサービスさえあれば、普通に生きていけるようになるかもしれません。
そうなった時、あなたは発達「障害」ではなく、「個性的な人」と言われるべきでしょう。
誰も困ることがなければ、もうそれは「個性」なのです。
生きにくい世の中だけど、それでも精一杯楽しんで生きていこう。
世の中は、「定型発達」の人のためにできています。ですから、発達障害の人には生きていきにくい世の中だ、と言えるかもしれません。
でも、世の中には楽しいことがいっぱいあります。それを楽しむことは、誰にも邪魔される必要はないのです。
精神疾患があなたの中心にあるかもしれません。でも、「中心に据えて振り回されすぎない」ようにしていきましょう。そして、余暇をしっかり楽しんでいけば、充実した人生を送ることができるのではないでしょうか。
精神科専門医(精神保健指定医)岡田夕子
いかがでしたか?
私たち社会保険労務士に障害年金の相談に来られる方の中には発達障害の方も多くいらっしゃいます。
一様にして社会生活、特に職場でのコミュニケーションで悩んでおられ、症状が悪化し就労の継続が困難となり障害年金の申請を検討しているというケースです。
今は、障害者支援も広がっており、就労移行支援や就労継続支援A・B型、リワークなどを利用しながら障害年金の受給を受けて生活されるのが現実的かもしれません。
障害年金の受給は難易度が個々によってバラバラですので、申請のための支援が必要な場合は障害年金専門、若しくは特化した社労士に協力を仰ぐことは受給のための近道だと思います