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2019/06/13更新

精神科医のコラム5/8【ADHD(注意欠如多動性障害)の重症化を防ぐには】

ADHD(注意欠如多動性障害)の重症化を防ぐには

初診日

 

ADHDって何?ざっくり3つに分けると「多動性」「不注意性」「衝動性」

 

ADHDって、よく聞く言葉かもしれないのですが、どんなものかお分かりでしょうか?まずはそこから、お話ししていきたいと思っています。

 

ADHDというのは、日本語でいうと「注意欠如(欠陥)多動性障害」の略ですね。最後のDはdisorder(障害)の略です。

 

注意力が「足りていない」もしくは「欠如している」というのが「不注意性」です。これは、忘れ物が多かったり、うっかり信号を見ずに横断歩道を渡ってしまったり、そういった「うっかり」を言います。

 

多動性というのはそのもので、「人より動きが多い」という意味です。落ち着きがなく見えるのですね。あちこち、そわそわいつも動いている。そういう状態を言います。

 

最後は、病名には加わっていませんが「衝動性」です。ここがある意味「障害と呼ばれてしまうか否か」の分かれ目だと思うのですね。衝動的に何かをしてしまいたくなる。衝動的に怒ったり、衝動的に新しいことを始めたり、こと周囲の人に迷惑をかけがちです。

 

この「不注意性」「多動性」「衝動性」が揃っていて、何か社会的に困っている人のことをADHDと言います。

医師

DSM5より、自閉症スペクトラム障害と併存が可能になりました。

 

DSM-Ⅳ-TRまでは、自閉症スペクトラム障害などのいわゆる広汎性発達障害やアスペルガー症候群と、ADHDの合併は認められていませんでした。

 

しかし、診断している医師としては、「これは発達障害とADHDが合併しているような印象」というのはたくさんの症例にあったのです。

 

これが反映されたのがDSM-5です。自閉症スペクトラム障害とADHDの両方の病名が使えるようになったのです。

 

これは大変なメリットです。どちらの病気に対する治療薬も併用できるということですから。

薬

ADHDには効果のある薬が3種類あります。

 

実は今、4種類目の薬が発売間近と言われていますが、今のところ保険適応を取っているのは3種類です。①コンサータ②ストラテラ③インチュニブ、この3種類です。

 

現在ではインチュニブは18歳までの使用制限が出ており、現在成人の発達障害に使えるのは①と②ということになります。私はあまり併用はしませんが、併用されている方も多いのではないでしょうか?

 

薬が効果を発揮するための回路がだいぶ違うので、併用されていることも多いのではないかと思います。

 

これは、明らかにADHDの人の「衝動性」と「多動性」を解消してくれます。この2つに効くほどには「不注意性」には効果がないと言われていますが、赤信号を気にせず渡ってしまうほどの不注意には効果があるようです。

 

この病気にはこの薬!というイコールの関係がある薬は、精神科では珍しいことです。

 

ADHDの方は、せっかく効果のある薬があるのですから、上手に利用してください。

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「障害」と言われてしまうのはどういう状態か。

 

これは、自閉症スペクトラムの項でもお話しましたが、その症状によって「社会とのつながりが困難になること」もしくは「社会でたくさん人に迷惑をかけてしまうこと」です。

 

ADHDの人はその多動性や衝動性から、本人は困っていなくても、喧嘩っ早かったり、他人に迷惑をかけていることもあります。

 

ここで大事になるのは「自分の行動を抑えないと人を不快にしてしまうようだ」という自覚を持つことです。

 

それを治すための薬は、先ほどの説明の通り何種類もあるのですから、薬をうまく利用して、トラブルを避け、社会との繋がりをなくさないようにしましょう。

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ADHDが重症化するってどういうこと?

 

ADHDも、自閉症スペクトラムと同じで生まれついての脳機能の問題だと言われています。では、それが重症化するとはどういうことでしょうか。

 

これも自閉症スペクトラムの項で説明した通り、「社会から切り離されて孤立していくこと」「孤立したために別の精神障害を患ってしまうこと」だと考えています。

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重症化していくと、二次障害が起きてくる。

 

人とトラブルになるのは、決して気持ちのいいものではありませんよね。それは、当事者であるあなたもそうだと思います。

また、自分の行動を否定されたり、「迷惑だ」と言われてしまったりすると、とても不快な思いをすると思います。

 

それが不快で済んでいる場合はまだ良いのですが、それが自分自身で自分を否定してしまうことに繋がってしまったり、気持ちの落ち込みに繋がったりすると、適応障害やうつ病が発症してしまいます。

 

発達障害の人のうつ病や適応障害は、同年代の発達障害を持たない人と比べて自責的、自分を責めている印象があります。

自分を責めるというのは、否定するということですから、自尊心が低くなってしまいます。

 

「どうせ、自分なんて」と思ってしまうと二次障害を引き起こしやすくなります。

薬

二次障害を起こさないためにはどうしていくのが良いのか。

 

ADHDの人にとって、二次障害を起こさないために必要なことは、「自分の乗りこなし方を覚える」ことに尽きると思います。

 

人に接触すること自体は、ADHDの人は苦手でないことが多いです。でもその衝動性や不注意性から人とトラブルになってしまう。その結果自尊心が傷ついていってしまうのです。

 

自尊心を傷つけないことが一番大事なのですが、そのためには人とのトラブルを未然に防ぐことが大事です。

 

ADHDの人の脳は乗りにくいじゃじゃ馬のようなもので、乗りこなし方を覚えれば適切に対処できていくのです。

 

ただしそのためには、トライアンドエラーが必要かもしれません。少しの失敗は恐れず行動しましょう。でもその失敗にパターンが見えてきたら、どうやったらそのパターンにハマり込まなくていいかを考えてみましょう。

支援

発達障害だって発達する。自分なりのペースで成長しよう。

 

これは、自閉症スペクトラムの人にも言えることなのですが、「発達障害」の一部に入るADHDの人も、「発達しない」と決めつけてしまうのは良くありません。

 

「苦手な部分も、人よりは遅いかもしれないけど確実に成長していく」のです。

 

だから、今出来ないことを諦めないでください。

 

最初は、忘れ物をなくすために大量にものの入ったカバンを持ち歩くかもしれません。イライラして物に当たったりしてしまうかもしれません。でも、それが一生続くわけではないことを覚えておいて欲しいのです。

 

いろいろな工夫もできますし、成長していけば改善していくこともあります。諦めずにいろいろなことを試してみることが大切です。

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自分なりのペースで成長するときに、お薬はその手助けをしてくれる。

 

自分なりのペースで成長していけば、自尊心が傷つくようなトラブルは減っていくかもしれません。でも、それまでに人間関係がズタズタになって、二次障害で引きこもっていてはせっかくの成長が台無しになってしまいます。

 

そうならないために、お薬で多動性や衝動性を少し抑えて、トラブルを減らすことができるのです。

 

精神科のお薬だから一生飲み続けなければならないと必要以上に怖がる必要はありません。

成長に伴ってお薬を減らしたりやめたりすることができる可能性は十分にあり得るということです。

 

ただそれまでに自尊心を守るために、お薬はやっぱり使った方が生きていきやすいんじゃないかな、と考えています。

 

自閉症スペクトラムという診断であっても、合併することが許された以上、ひょっとすると「ADHDにも少し当てはまる」部分がある人が多いと感じています。

 

そしてその時に、ADHDの薬を使うことで、生きていきやすくなる人は自閉症スペクトラムの人にもいるのではないか、と考えています。

治癒

ADHDらしさが「薄まって」、困りごとがなくなればそれは「あなたらしさ」になる。

 

お薬を飲まなくても普通に働けて、誰の助けも工夫次第で必要ない状態であるとしたら。それは「あなたらしさ」なのかもしれません。

 

そこまでの成長をできる可能性がある人は、ADHDの人の中にたくさんいるのではないかと思っています。

 

誰でも得意不得意はあるものです。それが人よりもはっきりしているだけ、と考えれば「らしさ」のような気がしませんか。

社会的治癒

「あなたらしさ」になれば、もう精神科は必要ないかもしれません。

 

あなたが困っていなくて、周りの人も困ってないのであれば、もう通院は必要ないのかもしれません。ADHDや自閉症スペクトラムの人はそこを目指せる病気だと思います。

 

ただ、二次障害が起きてしまうとそうはいかなくなってくるものです。

 

お薬と上手に付き合い、自尊心を守り、ゆっくり成長していくのを待っていきましょう。

 

 

精神科専門医(精神保健指定医)岡田夕子

 

いかがでしたか?

自分は発達障害なのではないか?と考えたことがある人は多いと思いますが、自分を責めすぎてしまいうつ病などの2次障害を併発しておられる方はSen社会保険労務士法人に障害年金の相談に来られる方の中にも多くいらっしゃいます。

 

障害年金を受給する事が目的ではなく、一時的な所得補償として障害年金の申請をされる方が多い事を考えると、いかに治癒させるかと言う事も重要な事であると理解しています。

 

こういった情報を参考にしながら少しでも症状の緩和に繋がれば幸いです。

 

また、ADHDで障害年金の申請をご検討の方はSen社会保険労務士法人までご相談ください。

こちらから無料相談予約が可能です。

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