スタッフブログ
2019/05/14更新
精神科医のコラム3/8【統合失調症の重症化を防ぐにはどうしたら良い?発症から重症化までをたどる】
最初の「幻覚妄想状態」は突然訪れます。ここでの治療が一番肝心です。
「どこからかいるはずのない人の声が聞こえてくる」「自分が誰か(特定の人のこともあります)に後をつけられている気がする」「自分は神様に選ばれたすごい人なのかもしれない」こういった症状を「幻覚」「妄想」と言います。
幻覚や妄想がある状態なので「幻覚妄想状態」といいます。
ストレスがかかっていたり、あまりよく眠れていなかったり、そういう時期であることもありますが、だいたいの人は「突然」幻覚妄想状態になります。
その瞬間から、どのくらいで病院にたどり着き、治療を受けられるか。そこがとても大事です。
「発症してから治療をしていない期間」が長くなればなるほど、綺麗に治りにくくなります。薬の効果もスマートでなくなってしまうのです。
ですから「一刻も早く」病院に行って、薬を飲みましょう。内服は絶対に必要です。
「なんで自分がそんな病気になってしまったのか」と考える前に、病院に行きましょう。
突然こうなってしまったのは誰のせいでもありません。交通事故に遭えば病院に駆け込むのと一緒なので、一刻も早く病院に駆け込んでください。
まずは「自分が病気である自覚」を持ちましょう。病識を持つことが治療の半分を占めています。
「病識」という言葉をご存知でしょうか?
「自分が病気であるという認識をしていること」を「病識を持っている」と表現します。
自分で自分のことを「病気だ」と自覚できれば、きちんと治療と向き合うことができますよね。
統合失調症は、この「病識」が非常に揺らぎやすい病気だと言われています。
最初は「なんか変」「病気かも」と思っていても、幻覚妄想状態が長引くにつれて「これは真実だ」「自分は本当に狙われているんだ」と思ってしまうようになります。
そうなると「病識を持っていた」のに、病気じゃないんだ、と思ってしまいかねません。
だから「自分が病気であるという自覚を持っている」ことが、統合失調症の治療において非常に重要となってきます。
病識を持っているだけで治療は半分以上成功していると医師は考えています。
もし納得ができない場合は、納得ができるまで主治医から話を聞きましょう。いつか納得できる瞬間が来ます。
そしてその瞬間を、医療者も、家族も、あなたのために待ちわびているのです。
再燃を繰り返すたびに重症になっていきます。
一度幻覚妄想状態を完全に抑え込んでも、服薬をやめると必ずまた幻覚妄想状態に逆戻りしてしまいます。
これを「再燃」と言います。鎮火していたところから再び炎が上がってしまうのです。
これを繰り返すたびにどんどん重症化していきます。
薬は効きにくくなり、また説明しますが人格水準の低下が起こります。薬は増え、それでも幻覚妄想状態が完全には良くならないようになってしまいます。
「荒廃状態」まで至る人もいるでしょう。
それほどまでに「再燃」というのは怖いものなのです。
重症になると「人格水準が低下」します。
「人格水準」というのは非常に専門的で難しい言葉なので少し横に置いておきます。
「人格水準が低下する」とどうなるかについて簡単に説明しておきたいと思います。
「今までできていたことが徐々にできなくなっていく」のです。
例えば家事、調理や洗濯、掃除など、できていたことができなくなってしまったり、内服の管理も、最初は忘れずにできていたのに、助けがいるようになってしまったりするのです。
「人格水準が低下した」状態になってしまうと、一人で暮らしていくのが難しくなってしまったり、家庭での生活を維持することが難しくなってしまったりします。
これがどういう時に起きるかというと、「重症になってきたとき」なのです。それは先ほど書いた通り「再燃を繰り返していく」ことで陥っていきます。
統合失調症は、一生治ることはない病気です。お薬はしっかり飲み続けよう。
あなたは、主治医の先生から統合失調症であるという診断を受けました。それは非常につらく苦しいことかもしれません。統合失調症は一生治ることはない病気です。
でも、逃げずに向き合って欲しいのです。
お薬は、あなたの望む100%の効果はもたらしてくれないかもしれません。でも、100%の効果をだすよ!というような医療から引き離す民間医療の甘い誘惑に乗らないで欲しいのです。
民間療法の全てがダメだと言っているわけではありません。「内服を続けながら」であれば問題ありません。あなたが納得して生活することもとても大事なことです。
重症化しないために必要なこと、それは「内服を続ける」ことです。内服をしながら社会生活を送っている人はたくさんいます。
自分で勝手にお薬を調節しないことが大事です。
「幻覚妄想状態を抑えるために必要な薬の量」を内服し続けることが大事です。
ただし、幻覚妄想状態がない状態を長く続けていると、必要なお薬の量というのは減ってくることも多いです。
大丈夫な状態が長く続くと、「お薬を減らしたい」「飲まなくても平気なのではないか」と思ってしまうのが人間の当たり前の心情だと思います。
でもそこで「自分で勝手に」やらないことが大事です。
「少し減らしたい」「やめてみたい」と思った場合は、「必ず」主治医に相談しましょう。
私は「幻覚妄想が全くない状態が半年以上続いている場合」には、患者さんと相談の上でお互い納得することができれば、少しずつの減量を試みることがあります。
ですので、自分でお薬を「勝手に調節」することはやめましょう。
お薬のことで思うことがあれば絶対に主治医の先生に相談してください。自分で勝手に一人でやらないことが大事です。
お薬の飲み忘れが多い人は、一度「2週間、もしくは1ヶ月に1度でいい注射」にできないか相談しよう。
毎日飲むお薬はつい忘れてしまう、まあまああることだと思います。
でも、1週間のうち2日も3日も飲み忘れるようでは「再燃」が怖いことになります。
最近、数種類の薬にすぎないかもしれませんが、「2週間に1度」「1ヶ月に1度」でいい注射薬というのがあります。
相性やその薬があなたにとって有効かどうかとか、ハードルはありますが、飲み忘れが過ぎる人はそういった薬にできないかどうか主治医の先生に相談してみるのも手です。
何も理由がないのに「再燃」してしまうこともありますが、睡眠不足は幻覚妄想の元になりかねません。規則正しい生活をしよう。
毎日しっかり決められたお薬を飲んでいたのに、「再燃」してしまった、ということはあるかもしれません。病気にもその時々の「勢い」がありますから、そこをくよくよしてしまっても仕方ありません。そこは不運だったと流しましょう。
ただし、「再燃」を誘発しやすい行動というのがあります。その代表的なのが「睡眠不足」です。
睡眠不足になると病気でない人でも判断力が鈍くなったり、脳の機能が落ちたりすることが知られています。
幻覚妄想は、そういう「弱った状態」の時に近寄ってくるものです。睡眠は毎日十分にとって、規則正しい生活を心がけるようにしましょう。
少しでも不調を感じたら早めに主治医の先生に相談しよう。きちんとした治療をすれば、普通の人と変わらない生活を送ることができます。
また、少しでも「あれ、なんか狙われてる気がする、かも・・・」など、不調を感じたら予約を早めてでも、早めに主治医の先生に相談しましょう。
早め早めの対処が「再燃」に持ち込ませない方法です。
「幻覚妄想状態」の「病気の時期」が人生の中で占める割合が多くなれば、どんどん重症になっていきます。
でも、そうなる前に対処していけば、「普通の雇用形態で働く」ことも「家庭を持つ」ことも夢ではありません。
「きちんとした治療」を「続けて」いれば、普通の人と変わらない生活を送ることができます。
妊娠・出産の希望があるときは精神科の主治医にもきちんと相談しよう。
女性であれば、「自分の子どもを持ちたい」と思うことも、今後の人生であるかもしれません。
そういう時は、必ず主治医の先生に相談しましょう。
「今飲んでいる薬が妊娠に対して安全かどうか」というのはわからない部分も多いですが、わかっていることもあります。
また、出産後に「幻覚妄想状態」になることもあるので、精神科と産婦人科もあるような総合病院での出産が必要かもしれません。
ですから、「必ず」主治医の先生に相談しましょう。
精神科専門医(精神保健指定医)岡田夕子
いかがでしたか?
当、社労士事務所においても障害年金の申請件数が特に多い傷病です。
しかし、ご病気を抱えながら複雑な障害年金の受給をめざすことに心が折れる思いをして断念する方もたくさんいらっしゃいます。サポートするご家族の方やソーシャルワーカーの方がいらっしゃればよいのですが、そうでない方については私たちのような社会保険労務士が障害年金の申請代行する事で、障害年金の受給に繋がれば幸いです。
当、社労士事務所の統合失調症における障害年金事例はコチラにございますので、ご参考なさってください。
-
最新の記事一覧