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2019/05/01更新
精神科医のコラム2/8【躁うつ病の重症化を防ぐにはどうしたら良い?】
障害年金の申請可能な傷病:躁うつ病の重症化を防ぐにはどうしたら良い?発症から重症化までをたどる
躁うつ病には「躁病の時期」と「うつ病の時期」と「どちらでもない時期」があります。
躁うつ病の人には、3種類の時期があります。
ひとつは、「躁病の時期」です。
この時期は、気分が高まって、なんでもできるような気がして、なんなら自分が病気じゃないような気がする状態になります。
気分が高まっているあまりにイライラする人もいるかもしれません。
仕事が捗りすぎることもあるでしょう。でも、周りには迷惑をかけていることが多いです。
これは、治療が必要な時期です。
2つめは、「うつ病の時期」です。
この時期は、気分が落ち込んで何もできなくなったり、死んでしまいたくなったりします。
仕事に行くことも、家事をすることも、なんなら生きていることさえ億劫になるかもしれません。
これも、治療が必要な時期です。
3つめは、「どちらでもない時期」です。
この時期は、気分が高まることも、落ち込むこともなく、日常生活に支障はありません。
主観的に見て日常生活に支障がないだけでなく、人に迷惑をかけることもありません。
この時期の躁うつ病の人は、ともすれば「病気でもなんでもない人」に見えるでしょう。
「どちらでもない時期」が発症してからどのくらいの割合を占めているかが重要。
躁うつ病が重症になっていく人とは、「躁病の時期」や「うつ病の時期」ばかりで、「どちらでもない時期」が少ない人のことを言います。
「躁病の時期」や「うつ病の時期」を繰り返すことで、どんどん重症になっていってしまうのです。
重症化を防ぐには「どちらでもない時期」が人生のどの程度の期間を占めているかが重要になってきます。
「どちらでもない時期」が長ければ長いほうが、重症化はしにくいことになります。
年齢とともに落ち着いてきますが、基本的には一生お薬が必要な病気です。
どちらでもない時期がたくさん続けば、それは治ったっていうことなの?と思う方もいるかもしれません。
しかし、躁うつ病は一生付きまとってくる病気です。
「どちらでもない時期」がどれだけ長く続いても、今飲んでいるお薬をやめてしまうと、「躁病の時期」か「うつ病の時期」が訪れてしまいます。
もちろん、年齢が衰えると、その分精神的にも衰えるので、若いころの病気の勢いはなくなっていきます。
しかし、だからと言って薬がやめられるわけではありません。
「これは一生抱えていく病気なのだ」と覚悟を決めて、向き合いましょう。
「躁病」「うつ病」のどちらも、繰り返すことで人格水準が低下します。
人格水準、というと少し専門的で難しい単語に聞こえるかもしれません。
しかしここでは「人格水準」という言葉の定義は少し横に置いておきましょう。
「人格水準が低下する」というのはどういうことをいうのでしょうか?
そこだけをおさえておきたいと思います。
人格水準が低下すると、今までできていたことができなくなるので重症と言えます。
人格水準が低下するということは、簡単にいうと、今まででできていたことができなくなることを言います。
例えば、料理ができていた人が料理ができなくなる。今まで一人で考えられていたことが考えられなくなる。
複雑なことに対応する能力が徐々に下がっていくわけですね。
また、「物事に対するやる気」自体も奪われていきます。
人と接することもしなくなったり、一日中家に引きこもったりするようになってしまいます。
こうなってくると周囲から見れば人間的に別人に見えてくると思います。重症化した後に、最後にたどり着くところです。
一度こうなると元に戻るのは本人の努力があっても、お薬の力があっても、不可能になってしまいます。
こうなる前に対応することが大事だということがよくわかりますよね。
気候の変わり目は悪くなりやすい時期、不調を感じたら臨時受診を申し入れよう。早めの対処が重症化を防ぐコツ。
「木の芽時」という言葉があります。木の芽が出る時期(3月〜4月ごろ)は、精神科の患者さんが悪くなりやすい時期なのです。
でも、あまり構える必要はありません。
自分のせいではないけれど、悪くなってしまう時期がある、と知ることが大事です。
「何も原因は思いつかないけど、なんか変」と思うことは、自分で自分の病気の変化に気づけているということなのです。
そういう時はためらわず、悪くなる前にかかりつけの精神科の先生を受診してください。
早めに対応することで、入院したりするほどの悪い状態にまで至らないことがあります。
「病気の時期を早めに対処する」ことはすなわち、「どちらでもない時期」を長くすることに繋がっていきます。
自分がもし違和感を感じたら、それを口に出しましょう。そうなってしまうことは、何もおかしくないことです。
声をあげて誰かと変化を共有して対応することが大事なのです。
お薬を勝手に調節しない。「治った」と思っても薬を続けることが重要。
先ほども、「一生付き合っていく覚悟」が必要だということは書きました。
繰り返しになりますが、年齢とともに心身が衰えていくのと同じで、病気の勢いも衰えていきます。
その時に「治ったのではないか」と思ってしまうことは、あると思います。
でも、どれだけ「どちらでもない時期」が続いたところで、「躁病の時期」「うつ病の時期」はすぐそばに隠れています。
見えていないだけなのです。
見えていないのは、お薬のおかげです。
ですから、勝手にお薬をやめてはいけません。自分で飲む量を調整してもいけません。
お薬を減らして欲しい時は、どうして減らして欲しいと思うのか、きちんと主治医の先生に伝えましょう。
主治医の先生が「確かにそうかもしれない、減らしてみよう」と思えば、減薬になると思います。
減薬してもどうもなければ問題ありませんが、「違和感」を感じたらすぐに主治医の先生に診察をしてもらいましょう。
「減薬するには早かった」ということだと思います。
実際に減らしてみないとわからないこともあるかもしれません。
そこは主治医の先生と二人三脚で進んでいくことが必要です。お互いが息を合わせることが大事です。
信頼関係のある主治医と長くお付き合いできることが望ましい。
これは、理想的には、という話なのですが、「一人の主治医の先生に長くみてもらう」ことも大事かもしれません。
入院施設を持っているような病院は、お医者さんの出入りが激しいのでそうはいかないかもしれないのですが・・・。
付き合いが長くなると、「あ、この人はいつもこの時期になると悪くなるよな」とか、「あ、この人は悪くなる前にこういう前兆があるな」というのをわかってもらいやすくなります。
お医者さんも人間ですので年齢とともに老いていくので一生のお付き合いというのはなかなか難しいかもしれませんが、一人のお医者さんに長くみてもらう方がいいかもしれません。
同じ病院に長くかかると、お医者さんは入れ替わっても看護師さんは長く同じ人がいるとか、そういうこともあります。
そんな看護師さんがいち早く異変に気付いてくれることもあるでしょう。
ですので、ちょっと気に入らないからとすぐに病院を変わることはおすすめしません。
一つの病院で腰を据えて長く治療をしていきましょう。
精神科専門医(精神保健指定医)岡田夕子
まとめ
多くの精神疾患は障害年金の対象の傷病です。
躁うつ病(双極性感情障害)についてももちろん障害年金の申請対象となる傷病ですが、症状の重症度によって障害年金の受給の有無が判定されます。障害年金の受給を目指し、受給が決定したら症状が悪化しないように工夫する事が重要です。
当事務所では躁うつ病(双極性感情障害)の障害年金事例もございますので、ご参考になさってください。
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