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精神障害等の障害年金認定(総論)

はじめに 

本資料は、障害年金の認定基準について、精神障害、知的障害、発達障害、器質性精神障害、神経症・人格障害、てんかんなど各障害ごとに整理したものです。

患者様ご本人やご家族、代理人の皆様が、診断内容、療養状況、生活環境、就労状況などを把握し、適切な判断や情報提供の参考にしていただけるよう作成いたしました。

統合失調症 

現在の病状または状態像 

統合失調症は、前兆期、急性期、回復期など各時期で症状の出方が異なり、回復期から安定期に入り寛解される方もいらっしゃいますが、再発や急性期の症状が一部残る場合もあります。発病時からの経過や、直近1年程度の病状変動を踏まえ、症状の推移や予後を慎重に判断する必要があります。

た、妄想や幻覚といった異常体験、または自閉、感情の平板化、意欲の減退といった陰性症状(残遺状態)の有無も重要です。陰性症状が長期間続き、自己管理や社会的役割の遂行に大きな制限がある場合は、1級または2級の認定が検討されます。妄想や幻覚の有無にかかわらず統合失調症と診断されることもございますので、疑問があれば担当医にご確認ください。 

療養状況 

入院中の場合は、入院期間、院内での病状の経過、入院理由などが評価されます。たとえば、病棟内で常時個別の援助が必要な場合は、重度と判断される可能性があります。
在宅療養の場合は、療養状況、通院頻度、治療内容、薬物治療の目的や種類、用量(血中濃度が分かればなお良い)や治療期間、服薬状況などを総合的に検討します。

また、通院や薬物治療が困難な場合は、その理由や他の治療の有無、家族や訪問介護による援助状況も判断材料となり、1級または2級の認定が検討されます。 

生活環境 

生活環境では、日常生活において家族や福祉サービスの支援が受けられているかどうかが重要です。一人暮らしでも、家族や福祉サービスのサポートにより安定した生活が維持されている(または支援が必要な状態である)場合は、2級の認定が検討されます。

また、一人暮らしとなった背景やその時期、入所施設、グループホーム、家族との同居など、支援体制が整っている環境下で、単身生活時にどの程度支援が必要かが判断のポイントとなります。
なお、ご家族が多大な労力を費やした結果、やむを得ず単身生活となり十分な支援が受けられていない場合でも、障害の重さを過小評価するわけではありません。代理人は実際の住居状況を確認し、正確な生活環境を伝える必要があります。 

就労状況 

発症前に就労されていた場合、発症後も就労が継続されることがありますが、症状の影響で職務内容や賃金が変更されることもあります。精神ガイドラインでは、従前の就労状況に加え、現在の仕事内容、職場での支援体制、欠勤や早退、遅刻などの出勤状況への影響を評価します。

また、発症後に就労が可能な状態に回復された場合、就労移行支援や就労継続支援(A型、B型など)の利用状況も判断材料となり、これらの支援の程度に応じて1級または2級の認定が検討されます。一般企業や自営、家業で働かれている場合でも、同様の支援が受けられているのであれば、2級の認定となることがあります。 

他の疾患との関係 

統合失調症は、長らく精神障害の代表的疾患とされ、診断がなされやすい一方、他の疾患との鑑別が十分でなかったり症状が重複する場合もあります。そのため、他の疾患との関連についても十分注意が必要です。
たとえば、統合失調症と他の認定対象となる精神疾患が併存している場合は、加重認定ではなく、すべての症状を総合的に判断して認定します。

また、人格障害は現行基準上原則対象外ですが、法的根拠が完全に排除されているわけではなく、場合により別の医師の意見で統合失調症と診断されることもあります。納得できない場合はセカンドオピニオンをお勧めします。

神経症も原則対象外ですが、臨床症状から精神病の病態に類似していると判断されれば、統合失調症または気分障害に準じた扱いがされます。また、ひきこもりの状況も、精神障害による日常生活への影響として評価されます。 

気分(感情)障害 

現在の病状または状態像 

気分障害は、長期間にわたって病相期が交互に現れるため、単一の時点だけでは全体像を把握しにくいです。そのため、精神ガイドラインでは、現時点の症状に加え、病相期間、発病時からの経過、直近1年の症状変動などを考慮し、日常生活や活動への影響、予後の見通しを基に、重篤な症状が長期間続いている場合に1級または2級の認定が検討されます。 

療養状況その他 

気分障害の療養状況、生活環境、就労状況などは、統合失調症の場合と同様の観点から評価されます。 

知的障害 

知的障害は、一般にIQ20未満を最重度、IQ35未満を重度、IQ50未満を中度、IQ70未満を軽度と分類されます。ただし、障害年金の認定では、IQだけで判断するわけではなく、療育手帳の判定とも必ずしも一致しません。従来は認定者の主観に左右される面が指摘され、地域差も問題となっていました。2016年より精神ガイドラインが運用されています。

知的障害の裁定請求では、診断書の「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」の記載が非常に重要です。
具体的には、適切な食事、清潔保持、金銭管理や買い物、通院・服薬、対人関係や意思伝達、身辺の安全保持、危機対応、社会性の7項目について4段階で評価し、全体の生活能力は5段階で判断します。
この組み合わせにより、診断書の記載から裁定結果が予測可能です。
なお、知的障害の診断書は精神保健指定医または精神科医が作成します。ただし、てんかん、発達障害、認知障害、高次脳機能障害など、複数の診療科にまたがる疾患の場合は、治療に従事している医師であれば記入可能です。

また、知的障害をお持ちの方は、併存疾患がない場合、通院が少ないため、診断書作成に協力していただける精神科医をまず探す必要があります。
診断書作成時には、家族や支援者からの具体的なサポート状況を丁寧に伝え、実際の生活状況が正確に評価されるようにすることが重要です。就労されている場合も、職場での支援状況が正しく反映されるよう情報提供が求められます。 

発達障害 

発達障害は、自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)など、先天的な脳機能の障害として理解され、精神障害の一種です(発達障害者支援法第2条参照)。
なお、DSM(米精神医学会の診断基準)は2013年5月に改訂され、アスペルガー症候群やADHD等の診断名は廃止され、またICD-11でも同様の動きが見られます。
かつては母親の養育が原因とされる説もありましたが、医学的には否定されています。

これまで発達障害は明確な認定対象とされなかったものの、裁定請求が一定数存在し、認定基準の整備が求められていた背景から、2010年12月10日公布の障害者自立支援法(2013年4月からは「障害者総合支援法」)および児童福祉法の一部改正により、2011年から対象として認定基準に盛り込まれました。
発達障害のおありの方は、社会行動やコミュニケーションに課題があり、対人関係が築きにくい、または不適応行動が見られるため、日常生活に支障が出ることがあります。認定基準では、社会性やコミュニケーション能力の不足、不適応行動の程度により等級が判断されます。
診断書では、「相互的な社会関係の質的障害」、「言語コミュニケーションの障害」、「限定された常同的で反復的な関心と行動」が例示されます。
また、同一人物が複数の発達障害を併存している場合もあり、症状の現れ方には個人差があります。知的障害にはIQという明確な数値がある一方、発達障害にはそのような指標がないため、認定には慎重な判断が必要です。

発達障害の場合、対人関係や意思疎通の困難さが日常生活にどのように影響しているか、具体例を収集し、担当医に説明の上で診断書に反映することが望まれます。補足資料として具体例を添付することも有用です。
知能指数が高くても障害年金の対象となる可能性はあり、発達障害は通常低年齢で症状が現れますが、知的障害を伴わない場合は障害に気づかず、大学生や社会人になってから発見されることもあります。その場合、初診日が20歳を超えることもあり、初診日や納付要件の取り扱いが変わる場合もありますが、厚生年金加入後に初診日を迎えた場合、障害厚生年金の受給に有利となる可能性があります。

また、精神ガイドラインでは、労働に従事しているからといって直ちに日常生活能力が向上したと判断せず、実際の療養状況、仕事内容、就労環境、職場での支援状況、対人関係の状態を確認した上で判断されます。一般企業で就労されている場合(障害者雇用制度を含む)で対人関係に困難がある場合は、2級の認定が検討されます。 

器質性精神障害 

器質性精神障害は、脳そのものに生じた器質的な病変、または脳以外の身体疾患により二次的に脳が障害され、精神障害を引き起こす状態を指します。
具体例として、アルツハイマー病、高次脳機能障害、アルコール性精神障害などがあり、ここでは主に高次脳機能障害およびアルコール性精神障害について説明します。 

高次脳機能障害 

高次脳機能障害は、脳血管障害や交通事故などの外傷が契機となり、認知障害や人格変化などが現れる状態の総称です。
主な症状は、記憶障害、人格変化、失認、失行などで、日常生活に大きな影響を及ぼす場合があります。
ただし、感情のコントロールや人格変化の判断は難しく、元来の性格との区別がつきにくいこともあります。

国としての対応や、交通事故損害賠償分野での議論も近年進んでおり、公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部の資料(『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準 2016(平成28年)下巻(講演録編)』)などが参考とされています。
また、2013年の改正により、障害認定基準「第8節 精神の障害」「2 認定要領」「B 症状性を含む器質性精神障害」(5)の項目により、高次脳機能障害が対象とされ、失語、失行、失認、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などが例示されています。
療養状況やリハビリテーションの効果も考慮され、総合的な判断が行われます。

なお、認知障害を主症状とする場合は「精神」の診断書を用いますが、従来の診断書様式では十分な記載が難しかったため、2013年に改正されました。
また、身体的障害を伴う場合はリハビリテーション科や神経内科の医師による診断書が作成されることがあり、その際は単身生活を前提とした評価である旨を明確に伝える必要があります。

さらに、精神の診断書と併せて肢体の診断書を使用する場合もあります。肢体の症状が固定している場合は初診日から6カ月、精神症状の場合は原則1年6カ月の猶予期間が必要です。また、失語障害がある場合は、言語機能の診断書の提出も求められます。
高次脳機能障害は「見えにくい障害」とも呼ばれ、周囲が変化に気づきにくい場合や確定診断が難しいことから、障害年金請求に特有の困難が伴います。画像検査で器質的な異常が確認されることが原則ですが、確認が難しい場合でも、担当医の確定診断があれば問題はありません。厚労省も2013年の改正時に認定事例を公表していますので、参考にしてください。 

アルコール性精神障害等 

アルコールや薬物の使用により生じる精神障害も、高次脳機能障害と同様の考え方で認定されます。認定方法も基本的には同じです。
ただし、「精神病性障害を示さない急性中毒や、明らかな身体依存の兆候がない場合は認定対象外とする」という見解があります。
過去の裁決例(『社会保険審査会審決集〔平成14年版〕』389頁)では、アルコール性認知症を示唆する症例が認定された事例もありますが、認知力の低下が著しい場合や他の精神障害を併発している場合を除き、アルコール依存症単独での認定は困難な傾向が強まっています。

また、アルコール摂取に関連する「ウェルニッケ・コルサコフ症候群」は、大量のアルコール摂取によりビタミンB1の吸収が阻害され、意識障害や眼球運動障害、健忘症候群が発症するものです。ただし、「飲酒によって肝臓が悪化している方を救済するのは適切でない」という意見もあり、認定は厳しい状況です。
なお、アルコール依存症や関連傷病に対して障害年金支給を認めない法的根拠はなく、自己責任という風潮が影響しているとの指摘もあります。しかし、抗酒剤を服用していてもなおアルコール摂取が続く場合、脳の器質的異常が背景にあると考えられ、対象拡大に向けた議論が続いています。国会審議(第46回国会衆議院社会労働委員会〔1964年4月22日〕)でも、厚生省が「麻薬やアルコールに起因する中毒性精神病は対象にいたします」と述べた事例があり、参考にしてください。

神経症・人格障害その他 

認定実務上、原則として対象から除外される精神疾患として、「神経症」と「人格障害」があります。
基準では、人格障害は原則対象外とされ、神経症も症状が長期間続いて重篤な場合でも基本的には対象外です。
ただし、ICD-10(詳細は後記第7章参照)のコードF4に該当する神経症で、精神病の病態(ICD-10コードF2の統合失調症またはF3の気分障害)に類似していると判断されれば、統合失調症または気分障害に準じた扱いがされることがあります(人格障害にはこの例外は適用されません)。
神経症が除外される理由としては、心因性で治癒の可能性が高い、または精神病に比べ障害が軽微とされる点がありますが、実際には重篤な症状で日常生活能力が大幅に低下する例もあり、一律に除外することの合理性に疑問が呈されています。

たとえば、恐怖症性不安障害、パニック障害、強迫性障害、重度ストレス反応、心的外傷後ストレス反応(PTSD)、適応障害、解離性障害などは、重症化・慢性化して社会生活に大きな影響を及ぼし、所得保障が必要な場合が多く見られます。
また、国際的にも神経症と精神病の区分は見直されつつあり、近年の国際分類やDSM-5では神経症という用語が控えられる傾向にあります。

社会保険審査会の裁決例でも、神経症の強迫性障害と精神病性うつ病の比較から境界のあいまいさが指摘され、診断に一貫性がない状況です。たとえば、ある医療機関では不安障害、別の医療機関ではうつ病と診断され、病名によって認定対象が左右されるのは不合理です。
このため、現状では基準のただし書きを活用するほか、神経症や人格障害の影響を正確に評価するための対策が求められています。実務上は、医師に対して精神障害用診断書の備考欄に精神病の病態とそのICD-10コードを詳細に記載していただくことが重要です。

また、人格障害については法的根拠が完全にないため、境界性人格障害など一部の症例では統合失調症または気分障害に準じた扱いがされる場合がありますが、その他の人格障害は日常生活への影響が2級相当と認めにくいという判例もあります。
さらに、摂食障害や過食症などその他の精神疾患のみ、現状では認定対象外となっています。
このような状況については、国に対して神経症や人格障害についても適正な受給権が認められるような検討が必要という声が上がっています。  

てんかん 

てんかんの障害程度は、認定基準の例示により、発作のタイプ(A~Dの4種類)、発作の頻度、そして日常生活能力の低下の程度で判断されます。ICD-10では、てんかんは神経系疾患(G40)に分類されますが、障害年金の請求では精神の診断書が用いられるため、実際の障害状態が十分に反映されにくいという課題があります。
日常生活能力は、精神障害の診断書で評価されるため、精神症状を伴う場合は適切な評価がされますが、精神症状がない場合、発作がない状態では食事摂取、清潔保持、他者との意思疎通に支障がないと評価されがちです。

また、診断書の「日常生活能力の程度」の評価項目に、てんかん特有の影響が十分に反映されていないため、現行の診断書による認定に不合理があると指摘されています。
精神ガイドラインでは、てんかんは対象外とする記述があり、2011年9月の改正時には「診断書の該当欄にてんかん特有の影響を判断できる項目を設けるべき」という意見があり、厚労省は「現症時の日常生活活動能力を基に判断している」と回答しています。
このため、現行基準では精神症状を伴わない発作のみのてんかんでも、日常生活能力の評価が要件となり、結果として受給対象から漏れる可能性があるのではと指摘されています。 

おわりに 

このコンテンツで記載した各障害の認定基準は、障害年金の申請手続きにおける一つの参考情報として提供しています。よって、個々の状況や申請時期により判断基準が変動する可能性もございますので、実際の書類作成や申請にあたっては十分な検討が重要です。

また、今後制度の改正や運用実態の変化も考えられますので、最新情報に留意されながら手続きを進めていただければと幸いです。

皆様がより安心して申請に臨まれるよう願っております。もしご相談がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。 

 

 

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