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障害年金における「初診日」の重要性
障害年金の申請を考えている方にとって、「初診日(最初にその病気やケガで医療機関を受診した日)」は、受給資格を判断する上で非常に重要なポイントです。
「いつ病院に行ったかなんて、覚えていない・・・」と思う方もいるかもしれません。しかし、この初診日は、障害年金が受給できるかどうかを大きく左右するため、正確に証明することがとても大切です。
この記事では、初診日の定義や証明方法、注意すべきポイントについてわかりやすく解説します。
初診日の定義と重要性
初診日とは?
初診日とは、正確には「疾病にかかり、または負傷し、かつ、その疾病または負傷およびこれらに起因する疾病(以下「傷病」という)について初めて医師または歯科医師の診療を受けた日」を指します。
また、国民年金・厚生年金保険の障害認定基準では、「起因する疾病」とは次のように定められています。
つまり、障害年金の請求傷病Bの前に相当因果関係のある前発の傷病Aがある場合、前発の傷病Aの初診日が請求傷病Bの初診日として扱われます。
また、過去に同じ病気を発症し、一度治癒した後に再発した場合は、原則として 再発後の受診日が新しい初診日となります。ただし、完治とみなされない場合は 同じ傷病として扱われるため、慎重な判断が必要です。
初診日の判断において注意すべき点
初診日の特定には注意が必要です。
(業務処理要領 197号・年金請求書(障害給付)3.1-(2) Jより)
- 初めて診療を受けた日 → 治療行為または療養に関する指示があった日が初診日となる。
- 同じ病気で転院した場合 → 最初に医師等の診療を受けた日が初診日となる。
- 過去の傷病が治癒し、同じ病気で再発した場合 → 再発後に診療を受けた日が初診日となる。
- 傷病名が異なっていても、同じ病気と判断される場合 → 最初の診療日の初診日が適用される。
- じん肺症(じん肺結核を含む) → じん肺と診断された日が初診日となる。
- 障害の原因となった病気の前に、関連性のある病気がある場合 → 最初の病気の初診日が適用される。
- 先天性の知的障害(精神遅滞) → 出生日が初診日となる。
- 先天性の心疾患や網膜色素変性症など → 具体的な症状が現れ、最初に診療を受けた日が初診日となる。
< 注意 >
- 障害年金の初診日は 「医師または歯科医師の診療を受けた日」 とされているため、整骨院・接骨院・鍼灸院での診療は初診日として認められません。
- また、発達障害(アスペルガー症候群や高機能自閉症など) は、関連する症状が出て初めて診療を受けた日が初診日となります。
初診日が重要な理由
障害年金の申請において、初診日は次の3つの判断に大きく関わります。
保険加入要件の判断
- 国民年金加入者(自営業・フリーランス) → 障害基礎年金
- 厚生年金加入者(会社員など) → 障害厚生年金
「20 歳前の年金制度未加入期間中」に初診日がある場合(20 歳前傷病による障害基礎年金)は、加入要件は問われません。
保険料納付要件の判断
初診日の前日時点で、一定の保険料を納めていること が受給の条件となります。
- 初診日がある月の前々月までの直近1年間に未納がないこと
※ただし、初診日が令和8年4月1日前にあるとき。 - 初診日がある月の前々月までの加入期間の3分の2以上の期間で保険料を納めていること
障害認定日の決定
障害認定日 とは、障害の程度が確定し、受給資格を判断する基準日です。
- 通常は初診日から1年6か月後となりますが、病状が固定した日が障害認定日となる場合もあります
初診日の証明方法
初診日は、最初にその病気やケガで医療機関を受診した日を指します。これを証明するためには、「医療機関の証明」や「公的な記録」などの証拠が必要になります。
原則として「受診状況等証明書」で証明する
受診状況等証明書とは?
受診状況等証明書は診断書作成医療機関の前に、他の医療機関で受診したことがある場合に、初診日を確認するために必要とされる書類で、一般的には「初診証明」「初診日証明」とも呼ばれています。受診状況等証明書そのものが初診日を証明する「医証」ではなく、「診療録に基づいて作成された受診状況等証明書」が初診日を証明する医証となります。受診状況等証明書に書かれた初診年月日が、診療録に基づかない記憶であったり、本人の申立てによる場合は、「医証」とは認められません。
その他
- 発行元:初診の医療機関
- 文書料:5000円前後(医療機関によって異なります)
- 発行期間:約1ヶ月(医療機関ごとに異なります)
✅ポイント
- 初診日を確定するための最も確実な方法 です。
- 現在通院中の病院ではなく、最初に受診した病院に依頼する必要がある ので注意しましょう。
※同じ病院に現在まで継続して通院している場合は、「受診状況等証明書」を省略できます。
初診日の病院で「受診状況等証明書」が取得できない場合
もし、初診日の病院で証明書が取得できない場合、次の方法で対応できます。
次の医療機関で「受診状況等証明書」を作成してもらう
初診日がある病院で受診状況等証明書が取得できない場合、その後に受診した次の病院にカルテが残っていれば、受診状況等証明書を作成してもらえます。
「受診状況等証明書が添付できない申立書」とは?
障害年金の申請では、カルテの保存期間が過ぎているなどの理由で 「受診状況等証明書」を取得できないことがあります。 その場合、「なぜ証明書が取得できないのか」を説明するために、この申立書を提出します。
「第三者証明」とは?
「受診状況等証明書が添付できない申立書」だけでは 初診日を証明することはできません。そのため、当時の状況を知っている第三者に 「請求者が特定の医療機関を受診していたこと」 を証明してもらう「第三者証明」が必要になります。
✖ ただし、請求者の三親等内の親族は第三者証明を行えません。
申請の流れ
- 医療機関に問い合わせるが、受診状況等証明書が取得できない
- 「受診状況等証明書が添付できない申立書」を作成
- 「第三者証明」を用意し、初診日の証明として提出
- 健康保険の受診履歴や診療録の一部など、「他の資料」も併せて提出
他の補助資料例
以下のような資料も 初診日の証明に役立つ ことがあります。
(1) 診察券・お薬手帳・健康診断記録
- 母子手帳(精神疾患など、幼少期の受診の場合)
- 当時の診察記録があれば、補助資料として活用可能
(2) 健康保険の診療記録(レセプト)
- 全国健康保険協会等から受診記録を取り寄せることができます。
- ただし、レセプトの保存期間は5年程度 なので、古い記録は取得できないこともあります。
(3) 身体障害者手帳や精神保健福祉手帳の申請時の資料
- 障害者手帳の申請書類に 初診日が記載されている場合、証拠として使える可能性あり
まとめ
障害年金の申請では「初診日」の証明が必須ですが、 カルテが残っていない場合でも、さまざまな方法で証明できる可能性はあります。
✅「初診日が証明できないかも…」と不安な方は、専門家(社労士)に相談するのも一つの方法です!
✅証明が困難な場合は、社労士等に相談するのがベスト。
障害年金の受給に向けて、できるだけ早めに「初診日」を確認し、必要な書類を準備しましょう!