
目次
上肢の障害、肢体の障害について
肢体の障害による障害の程度は、「上肢の障害」、「下肢の障害」、「体幹・脊柱の機能の障害」及び「肢体の機能の障害」に区分し、認定するとされています。
また、上肢の障害は、機能障害、欠損障害及び変形障害に区分されています。
・欠損障害
・変形障害
上肢の障害による障害の程度について
機能障害(上肢の障害)
機能障害の上肢の障害の程度について
機能障害の上肢の障害については次の通りとされています。
等級 | 障害の状態 |
1級 | 〇両上肢の機能に著しい障害を有するもの(以下「両上肢の用を全く廃したもの」という。) 「両上肢の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「両上肢の用を全く廃したもの」とは: 両上肢の3大関節中それぞれ2関節以上の関節が全く用を廃したもの、すなわち、次のいずれかに該当する程度のものをいう。 (ア) 不良肢位で強直しているもの 〇両上肢の全ての指の機能に著しい障害を有するもの(以下「両上肢の全ての指の用を全く廃したもの」という。) |
2級 | 〇一上肢の機能に著しい障害を有するもの(以下「一上肢の用を全く廃したもの」という。) 「一上肢の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「一上肢の用を全く廃したもの」とは: 一上肢の3大関節中いずれか2関節以上の関節が全く用を廃したもの、すなわち、次のいずれかに該当する程度のものをいいます。 (ア) 不良肢位で強直しているもの (イ) 関節の他動可動域が、健側の他動可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの (ウ) 筋力が著減又は消失しているもの 〇両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の機能に著しい障害を有するもの(以下「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の用を全く廃したもの」という。) 〇一上肢の全ての指の機能に著しい障害を有するもの(以下「一上肢の全ての指の用を全く廃したもの」という。) 〇身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 | 〇一上肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの 「関節の用を廃したもの」とは: 関節の他動可動域が健側の他動可動域の 2 分の 1 以下に制限されたもの又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、常時(起床より就寝まで)固定装具を必要とする程度の動揺関節)をいいます。 〇おや指及びひとさし指を併せ一上肢の4指の用を廃したもの 次のいずれかに該当するものをいいます。 (ア) 指の末節骨の長さの 2 分の 1 以上を欠くもの 〇身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
障害手当金 | 〇一上肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの 「関節に著しい機能障害を残すもの」とは: 関節の他動可動域が健側の他動可動域の 3 分の 2 以下に制限されたもの又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、常時ではないが、固定装具を必要とする程度の動揺関節、習慣性脱臼)をいいます。(注) 関節に著しい機能障害がない場合であっても、関節に機能障害を残すもの(「関節の他動可動域が健側の他動可動域の 5 分の 4 以下に制限されたもの」又は「これと同程度の障害を残すもの(例えば、固定装具を必要としない程度の動揺関節、習慣性脱臼)」をいう。)に該当する場合は、第 2 章「併合等認定基準(併合判定参考表の 12 号)」にも留意することとされています 〇一上肢の3指以上の用を廃したもの (ア) 指の末節骨の長さの 2 分の 1 以上を欠くもの 〇ひとさし指を併せ一上肢の2指の用を廃したもの 「指の用を廃したもの」とは:※1参照 〇身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの 上記の程度とは: ・一上肢に機能障害を残すもの(例えば、一上肢の 3 大関節中 1 関節の筋力が半減しているもの)をいう。 ・前腕の他動可動域が健側の他動可動域の 4 分の 1 以下に制限されたものは、同程度の障害を残すもの(「併合等認定基準(併合判定参考表の 10 号)」)とする。 |
人工骨頭又は人工関節を挿入置換したものについて
人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものについては、次のように取り扱うとされています。
区分 | 障害の状態 |
(ア) | 一上肢の 3 大関節中 1 関節以上に人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものや両上肢の 3 大関節中 1 関節以上にそれぞれ人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものは 3 級と認定する。ただし、そう入置換してもなお、一上肢については「一上肢の用を全く廃したもの」程度以上に該当するとき、両上肢については「両上肢の機能に相当程度の障害を残すもの」程度以上に該当するときは、さらに上位等級に認定する。 |
(イ) | 障害の程度を認定する時期は、人工骨頭又は人工関節をそう入置換した日(初診日から起算して 1 年 6 月を超える場合を除く。)とする。 |
人工骨頭又は人工関節を挿入置換したものについて
区分 | 障害の状態 |
(ア) | さじで食事をする |
(イ) | 顔を洗う(顔に手のひらをつける) |
(ウ) | 用便の処置をする(ズボンの前のところに手をやる) |
(エ) | 用便の処置をする(尻のところに手をやる) |
(オ) | 上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ) |
(カ) | 上位の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる) |
欠損障害(上肢の障害)
欠損障害の上肢の障害の程度について
欠損障害の上肢の障害については次の通りとされています。
等級 | 障害の状態 |
1級 | 〇両上肢の全ての指を欠くもの(以下「両上肢の全ての指を基部から欠き、有効長が0のもの」という。) 「上肢の指を欠くもの」とは: 基節骨の基部から欠き、その有効長が0のものをいう。 |
2級 | 〇両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を欠くもの(以下「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を基部から欠き、有効長が0のもの」という。) 「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を欠くもの」とは: 必ず両上肢のおや指を基部から欠き、それに加えて、両上肢のひとさし指又は中指を基部から欠くものである。 〇一上肢の全ての指を欠くもの(以下「一上肢の全ての指を基部から欠き、有効長が0のもの」という。) 「上肢の指を欠くもの」とは: 基節骨の基部から欠き、その有効長が0のものをいう。 |
3級 | 〇一上肢のおや指及びひとさし指を失ったもの又はおや指若しくはひとさし指を併せ一上肢の3指以上を失ったもの(以下「一上肢のおや指及びひとさし指を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くもの又はおや指若しくはひとさし指を併せ、一上肢の3指を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くもの」という。) 「指を失ったもの」とは:※2 おや指については指節間関節(IP)、その他の指については近位指節間関節(PIP) 以上で欠くものをいう。 |
障害手当金 | 〇一上肢の2指以上を失ったもの(以下「一上肢の2指以上を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くもの」という。) 「指を失ったもの」とは:※2参照 〇一上肢のひとさし指を失ったもの(以下「一上肢のひとさし指を近位指節間関節以上で欠くもの」という。) 「指を失ったもの」とは:※2参照 |
障害の程度を認定する時期について
切断又は離断による障害の程度を認定する時期は、原則として、切断又は離断をした日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とするとされています。ただし、障害手当金を支給すべきときは、創面が治ゆした日とするとされています。
変形障害(上肢の障害)
変形障害の上肢の障害の程度について
変形障害の上肢の障害については次の通りとされています。
区分 | 障害の状態 |
3級 | 〇長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの 「長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの」とは: 次のいずれかに該当するものをいいます。(偽関節は、骨幹部又は骨幹端部に限る。) (ア) 上腕骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの (イ) 橈骨及び尺骨の両方に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの なお、いずれも運動機能に著しい障害はないが、上腕骨、橈骨又は尺骨に偽関節を残すもの(「一上肢に偽関節を残すもの」という。)は、障害手当金(第2章「併合等認定基準(併合判定参考表の8号)」)に相当するものとして認定するとされています。 |
障害手当金 | 〇長管状骨に著しい転位変形を残すもの 「長管状骨に著しい転位変形を残すもの」とは: 次のいずれかに該当するものをいいます。 (ア) 上腕骨に変形を残すもの (イ) 橈骨又は尺骨に変形を残すもの ただし、変形とは外部から観察できる程度(15度以上わん曲して不正ゆ合したもの)以上のものをいい、長管状骨の骨折部が良方向に短縮なくゆ着している場合は、たとえその部位に肥厚が生じたとしても、長管状骨の変形としては取り扱わない。 |
関節可動域の測定方法、関節の運動及び関節可動域等の評価
測定方法については、「肢体の障害関係の測定方法」によるとされています。
- 関節の運動に関する評価については、各関節の主要な運動を重視し、他の運動については参考とするとされています。
- 関節可動域の評価は、原則として、健側の関節可動域と比較して患側の障害の程度を評価するとされています。ただし、両側に障害を有する場合にあっては、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域を参考とするとされています。
- 各関節の評価に当たっては、単に関節可動域のみでなく、次の諸点を考慮した上で評価するとされています。
(ア) 筋力 (イ) 巧緻性 (ウ) 速さ (エ) 耐久性
なお、他動可動域による評価が適切ではないもの(例えば、末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となっているもの)については、上記諸点を考慮し、日常生活における動作の状態から上肢の障害を総合的に認定するとされています。