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心疾患による障害の認定基準

心疾患による障害の程度について

心疾患による障害の程度は、呼吸困難、心悸亢進、尿量減少、夜間多尿、チアノーゼ、浮腫等の臨床症状、X線、心電図等の検査成績、一般状態、治療及び病状の経過等により、総合的に認定するものとし、

  • 当該疾病の認定の時期以後少なくとも 1 年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものは1級
  • 日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものは2級
  • 労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものは3級

以上に該当するものと認定するとされています。

 

 

心疾患とは

障害年金の認定基準における心疾患とは

障害年金の認定基準における心疾患とは、心臓だけではなく、血管を含む循環器疾患を指すものとされています(血圧「高血圧症による障害」については除く)。

区分

心疾患による障害は「弁疾患」「心筋疾患」「虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)」「難治性不整脈」「大動脈疾患」「先天性心疾患」に区分するとされています。

慢性心不全とは

心疾患の障害等級の認定は、最終的には心臓機能が慢性的に障害された慢性心不全の状態を評価することである、とされています。この状態は虚血性心疾患や弁疾患、心筋疾患などのあらゆる心疾患の終末像です。

慢性心不全とは、心臓のポンプ機能の障害により、体の末梢組織への血液供給が不十分となった状態を意味し、一般的には左心室系の機能障害が主体をなしますが、右心室系の障害も考慮に入れなければならないとされています。左心室系の障害により、動悸や息切れ、肺うっ血による呼吸困難、咳・痰、チアノーゼなどが、右心室系の障害により、全身倦怠感や浮腫、尿量減少、頚静脈怒張などの症状が出現する、とされています。

心疾患の主要症状と臨床所見「病状をあらわす臨床所見」

心疾患の主要症状としては、胸痛、動悸、呼吸困難、失神等の自覚症状、浮腫、チアノーゼ等の他覚所見があるとされています。

「臨床所見」には、自覚症状(心不全に基づく)と他覚所見があり、他覚所見は医師の診察により得られた客観的症状なので常に自覚症状と連動しているか否かに留意する必要があるとされています。重症度は、心電図、心エコー図・カテーテル検査、動脈血ガス分析値も参考とするとされています。

検査成績

検査成績としては、血液検査(BNP値)、心電図、心エコー図、胸部X線、X線CT、MRI等、核医学検査、循環動態検査、心カテーテル検査(心カテーテル法、心血管造影法、冠動脈造影法等)等があります。

心疾患の検査での「異常検査所見」

心疾患の検査での「異常検査所見」の一部は、次のとおりとされています。

 

区分 異常検査所見の内容
A 安静時の心電図において、0.2mV以上のSTの低下もしくは 0.5mV以上の深い陰性T波の所見のあるもの
B 負荷心電図(6Mets 未満相当)等で明らかな心筋虚血所見があるもの
C 胸部X線上で心胸郭係数 60%以上又は明らかな肺静脈性うっ血所見や間質性肺水腫のあるもの
D 心エコー図で中等度以上の左室肥大と心拡大、弁膜症、収縮能の低下、拡張能の制限、先天性異常のあるもの
E 心電図で、重症な頻脈性又は徐脈性不整脈所見のあるもの
F 左室駆出率(EF)40%以下のもの
G BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)が 200pg/ml 相当を超えるもの
H 重症冠動脈狭窄病変で左主幹部に 50%以上の狭窄、あるいは、3 本の主要冠動脈に 75%以上の狭窄を認めるもの(すでに冠動脈血行再建が完了している場合を除く)
I 心電図で陳旧性心筋梗塞所見があり、かつ、今日まで狭心症状を有するもの

※「F」についての補足

心不全の原因には、収縮機能不全と拡張機能不全とがあります。
近年、心不全症例の約 40%はEF値が保持されており、このような例での心不全は左室拡張不全機能障害によるものとされています。しかしながら、現時点において拡張機能不全を簡便に判断する検査法は確立されていません。左室拡張末期圧基準値(5-12mmHg)をかなり超える場合、パルスドプラ法による左室流入血流速度波形を用いる方法が一般的です。この血流速度波形は急速流入期血流速度波形(E波)と心房収縮期血流速度波形(A波)からなり、E/A比が 1.5 以上の場合は、重度の拡張機能障害といえるとされています。

※「G」についての補足

心不全の進行に伴い、神経体液性因子が血液中に増加することが確認され、心不全の程度を評価する上で有用であることが知られています。中でも、BNP値(心室で生合成され、心不全により分泌が亢進)は、心不全の重症度を評価する上でよく使用されるNYHA分類の重症度と良好な相関性を持つことが知られています。この値が常に 100 pg/ml 以上の場合は、NYHA心機能分類でⅡ度以上と考えられ、200 pg/ml 以上では心不全状態が進行していると判断されます。

一般状態区分表

区分 一般状態
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、 軽労働はできないが、日中の 50%以上は起居しているもの 
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となった​もの 
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、 活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの​ 

【参考】

上記の一般状態区分表の区分を身体活動能力にあてはめると概ね次のとおりとされています。

区分 身体活動能力
6Mets 以上
4Mets 以上6Mets 未満
3Mets 以上4Mets 未満
2Mets 以上3Mets 未満
2Mets 未満

※Metsとは:Metsとは代謝当量をいい、安静時の酸素摂取量(3.5ml/kg 体重/分)を1Metsとして活動時の酸素摂取量が安静時の何倍かを示すものです。

 

 

疾患別の各等級に該当すると認められるものの例示

弁疾患

 

等級 障害の状態
1級 病状(障害)が重篤で安静時においても、心不全の症状(NYHA 心機能分類クラスⅣ)を有し、かつ「一般状態区分表」のオに該当するもの
2級 ①:人工弁を装着術後、6 ヶ月以上経過しているが、なお「病状をあらわす臨床所見」が 5 つ以上、かつ「異常検査所見」が 1 つ以上あり、かつ「一般状態区分表」のウ又はエに該当するもの
②:「異常検査所見」のA、B、C、D、E、Gのうち 2 つ以上の所見、かつ、「病状をあらわす臨床所見」が 5 つ以上あり、かつ、「一般状態区分表」のウ又はエに該当するもの
3級 ①:人工弁を装着したもの(複数の人工弁置換術を受けている者にあっても、原則 3 級相当とする。)
②:「異常検査所見」のA、B、C、D、E、Gのうち 1 つ以上の所見、かつ、「病状をあらわす臨床所見」が 2 つ以上あり、かつ、「一般状態区分表」のイ又はウに該当するもの

※抗凝固薬使用による出血傾向については、重度のものを除き認定の対象とはしない。

 

心筋疾患

 

等級 障害の状態
1級 病状(障害)が重篤で安静時においても、心不全の症状(NYHA 心機能分類 クラスⅣ)を有し、かつ、「一般状態区分表」のオに該当するもの
2級 ①:「異常検査所見」のFに加えて、「病状をあらわす臨床所見」が 5 つ以上あり、か つ、「一般状態区分表」のウ又はエに該当するもの
②:「異常検査所見」のA、B、C、D、E、Gのうち 2 つ以上の所見、及び、心不全の「病状をあらわす臨床所見」が 5 つ以上あり、かつ、「一般状態区分表」のウ又はエに該当するもの
3級 ①:EF値が 50%以下を示し、「病状をあらわす臨床所見」が 2 つ以上あり、かつ、「一般状態区分表」のイ又はウに該当するもの
②:「異常検査所見」のA、B、C、D、E、Gのうち 1 つ以上の所見、及び、心不全の「病状をあらわす臨床所見」が 1 つ以上あり、かつ、「一般状態区分表」のイ又はウに該当するもの

(注) 肥大型心筋症は、心室の収縮は良好に保たれますが、心筋肥大による心室拡張機能障害や左室流出路狭窄に伴う左室流出路圧較差などが病態の基本となっています。したがってEF値が障害認定にあたり、参考とならないことが多く、臨床所見や心電図所見、胸部X線検査、心臓エコー検査所見なども参考として総合的に障害等級を判断するとされています。

 

虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)

 

等級 障害の状態
1級 病状(障害)が重篤で安静時においても、常時心不全あるいは狭心症状を有し、かつ、「一般状態区分表」のオに該当するもの
2級 異常検査所見が 2 つ以上、かつ、軽労作で心不全あるいは狭心症などの症状をあらわし、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの
3級 異常検査所見が 1 つ以上、かつ、心不全あるいは狭心症などの症状が 1 つ以上あるもので、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

(注) 冠動脈疾患とは、主要冠動脈に少なくとも1ヶ所の有意狭窄をもつ、あるいは、冠攣縮が証明されたものを言い、冠動脈造影が施行されていなくとも心電図、心エコー図、核医学検査等で明らかに冠動脈疾患と考えられるものも含むとされています。

 

難治性不整脈

難治性不整脈とは、放置すると心不全や突然死を引き起こす危険性の高い不整脈で、適切な治療を受けているにも拘わらず、それが改善しないものをいいます。

 

等級 障害の状態
1級 病状(障害)が重篤で安静時においても、常時心不全の症状(NYHA 心機能分類クラスⅣ)を有し、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの
2級 ①:「異常検査所見」のEがあり、かつ、「一般状態区分表」のウ又はエに該当するもの
②:「異常検査所見」のA、B、C、D、F、Gのうち2つ以上の所見及び「病状をあらわす臨床所見」が 5 つ以上あり、かつ、「一般状態区分表」のウ又はエに該当するもの 
3級 ①:ペースメーカー、ICDを装着したもの
②:「異常検査所見」のA、B、C、D、F、Gのうち 1 つ以上の所見及び「病状をあらわす臨床所見」が 1 つ以上あり、かつ、「一般状態区分表」のイ又はウに該当するもの

※心房細動は、一般に加齢とともに漸増する不整脈であり、それのみでは認定の対象とはなりませんが、心不全を合併したり、ペースメーカーの装着を要する場合には認定の対象となります。

 

大動脈疾患

 

等級 障害の状態
3級 ①:胸部大動脈解離(Stanford 分類A型・B型)や胸部大動脈瘤により、人工血管(ステントグラフトも含む)を挿入し、かつ、「一般状態区分表」のイ又はウに該当するもの
②:胸部大動脈解離や胸部大動脈瘤に、難治性の高血圧を合併したもの

※ Stanford 分類A型: 上行大動脈に解離がある。
※ Stanford 分類B型: 上行大動脈まで解離が及んでいないもの

大動脈瘤

大動脈瘤の定義
大動脈瘤の定義は「嚢状のものは大きさを問わず、紡錘状のものは、正常時(2.5~3cm)の 1.5 倍以上のものをいう」とされています。(※2倍以上は手術が必要。)

大動脈瘤とは
大動脈瘤とは、大動脈の一部がのう状又は紡錘状に拡張した状態で、先天性大動脈疾患や動脈硬化(アテローム硬化)、膠原病などが原因となります。これのみでは認定の対象とはなりませんが、原疾患の活動性や手術による合併症が見られる場合には、総合的に判断するとされています。

その他

  • 胸部大動脈瘤には、胸腹部大動脈瘤も含まれます。
  • 難治性高血圧とは、塩分制限などの生活習慣の修正を行った上で、適切な薬剤3薬以上の降圧薬を適切な用量で継続投与しても、なお、収縮期血圧が 140 mmHg 以上又は拡張期血圧が 90mmHg 以上のものをいいます。
  • 大動脈疾患では、特殊な例を除いて心不全を呈することはなく、また最近の医学の進歩はありますが、完全治癒を望める疾患ではありません。従って、一般的には 1・2 級には該当しませんが、本傷病に関連した合併症(周辺臓器への圧迫症状など)の程度や手術の後遺症によっては、さらに上位等級に認定するとされています。

 

先天性心疾患

 

等級 障害の状態
1級 病状(障害)が重篤で安静時においても、常時心不全の症状(NYHA 心機能分類クラスⅣ)を有し、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの
2級 ①:「異常検査所見」が 2 つ以上、及び、「病状をあらわす臨床所見」が 5 つ以上あり、かつ、「一般状態区分表」のウ又はエに該当するもの
②:Eisenmenger 化(手術不可能な逆流状況が発生)を起こしているもので、かつ、「一般状態区分表」のウ又はエに該当するもの 
3級 ①:「異常検査所見」のC、D、Eのうち 1 つ以上の所見、及び、「病状をあらわす臨床所見」が 1 つ以上あり、かつ、「一般状態区分表」のイ又はウに該当するもの
②:肺体血流比 1.5 以上の左右短絡、平均肺動脈収縮期圧 50mmHg 以上のもので、かつ、「一般状態区分表」のイ又はウに該当するもの

 

重症心不全

心臓移植や人工心臓等を装着した場合の障害等級は、次のとおりとするとされています。ただし、術後は次の障害等級に認定するとされていますが、1~2年程度経過観察したうえで症状が安定しているときは、臨床症状、検査成績、一般状態区分表を勘案し、障害等級を再認定するとされています。

 

等級 障害の状態
1級 心臓移植をおこなったもの
人工心臓を装着したもの
2級 CRT(心臓再同期医療機器)、CRT-D(除細動器機能付き心臓再同期医療機器)を装着したもの

 

 

その他の認定要領

  • 肺血栓塞栓症、肺動脈性肺高血圧症は、心疾患による障害として認定するとされています。
  • 心血管疾患が重複している場合には、客観的所見に基づいた日常生活能力等の程度を十分考慮して総合的に認定するとされています。
  • 心臓ペースメーカー、又はICD(植込み型除細動器)、又は人工弁を装着した場合の障害の程度を認定すべき日は、それらを装着した日(初診日から起算して 1 年 6 月を超える場合を除く。)となっています。
  • 各疾患によって、用いられる検査が異なっており、特殊検査も多いため、診断書上に適切に症状をあらわしていると思われる検査成績が記載されているときは、その検査成績も参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定するとされています。
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