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腎疾患による障害の程度の認定について
腎疾患による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績、一般状態、治療及び病状の経過、人工透析療法の実施状況、具体的な日常生活状況等により総合的に認定するものとされており
- 当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものは1級
- 日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものは2級
- 労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものは3級
に該当するものと認定するとされています。
腎疾患の障害とは
腎疾患による障害の認定対象のほとんどが、慢性腎不全に対する認定となっています。慢性腎不全とは、慢性腎疾患によって腎機能障害が持続的に徐々に進行し、生体が正常に維持できなくなった状態をいいます。
すべての腎疾患は長期に経過すれば腎不全に至る可能性があります。腎疾患で最も多いものは、糖尿病性腎症、慢性腎炎(ネフローゼ症候群を含む。)、腎硬化症となっていますが、他にも多発性嚢胞腎、急速進行性腎炎、腎盂腎炎、膠原病、アミロイドーシス等があります。
腎疾患の主要症状と検査
腎疾患の主要症状としては、悪心、嘔吐、食欲不振、頭痛等の自覚症状と、浮腫、貧血、アシドーシス等の他覚所見があります。
腎疾患の検査
検査としては、尿検査、血球算定検査、血液生化学検査(血清尿素窒素、血清クレアチニン、血清電解質等)、動脈血ガス分析、腎生検等が行われます。
各等級に相当すると認められる障害の程度の例
各等級に相当すると認められる障害の程度の例は次の通りとされています。
等級 | 障害の状態 |
1級 | 慢性腎不全の検査成績が高度異常を1つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表の「オ」に該当するもの |
2級 | ①:慢性腎不全の検査成績が中等度又は高度の異常を1つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表の「エ」又は「ウ」に該当するもの ②:人工透析療法施行中のもの |
3級 | ①慢性腎不全の検査成績が軽度、中等度又は高度の異常を1つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表の「ウ」又は「イ」に該当するもの ②ネフローゼ症候群の検査成績のうち尿蛋白量(1日尿蛋白量又は尿蛋白/尿クレアチニン比)が異常を示し、かつ、血清アルブミン(BCG法)又は血清総蛋白のいずれかが異常を示すもので、かつ、一般状態区分表の「ウ」又は「イ」に該当するもの |
※「慢性腎不全による検査成績」「ネフローゼ症候群の検査成績」「一般状態区分表」については、下記に記載しております。
慢性腎不全の検査成績
区分 | 検査項目 | 単位 | 軽度異常 | 中等度異常 | 高度異常 |
ア | 内因性クレアチニンクリアランス | ml/分 | 20以上30未満 | 10以上20未満 | 10未満 |
イ | 血清クレアチニン | mg/dl | 3以上5未満 | 5以上8未満 | 8以上 |
※eGFR(推算糸球体濾過量)が記載されている場合は、eGFR(単位は ml/分/1.73 ㎡)が 10 以上 20 未満のときは軽度異常、10 未満のときは中等度異常と血清クレアチニンの異常に替えて、取り扱うことも可能とされています。
ネフローゼ症候群の検査成績
区分 | 検査項目 | 単位 | 異常 |
ア | 尿蛋白量(1日尿蛋白量又は尿蛋白/尿クレアチニン比) | g/日 又は g/gCr |
3.5以上を持続する |
イ | 血清アルブミン(BCG法) | mg/dl | 3.0以下 |
ウ | 血清総蛋白 | g/dl | 6.0以下 |
一般状態区分表
等級 | 障害の状態 |
ア | 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの |
イ | 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など |
ウ | 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、 軽労働はできないが、日中の 50%以上は起居しているもの |
エ | 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの |
オ | 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、 活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの |
その他の認定要領
人工透析
人工透析療法施行中のものについては、原則として次により取り扱うとされています。
- 人工透析療法施行中のものは2級と認定する。
- 障害の程度を認定する時期は、人工透析療法を初めて受けた日から起算して3月を経過した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。
相当因果関係
糸球体腎炎(ネフローゼ症候群を含む。)、腎硬化症、多発性嚢胞腎、腎盂腎炎に罹患し、その後慢性腎不全を生じたものは、両者の期間が長いものであっても、相当因果関係があるものと認められる、とされています。
腎臓移植の取扱い
- 腎臓移植を受けたものに係る障害認定に当たっては、術後の症状、治療経過、検査成績及び予後等を十分に考慮して総合的に認定する、とされています。
- 障害年金を支給されている者が腎臓移植を受けた場合は、臓器が生着し、安定的に機能するまでの間を考慮して術後1年間は従前の等級とする、とされています。