
障害年金制度の目的
障害年金は、被保険者期間中の傷病によって日常生活能力や労働能力などが制限されるような障害の状態になった場合に、その生活の安定を図るための給付である、とされています。
通常は加齢に伴って起こる稼得能力の喪失が、現役期に障害状態となることで早期に到来することに対応するものとして、その保険事故の発生に対し、一定の所得保障を行うことを目的としています。
障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。
障害年金には、『障害基礎年金』『障害厚生年金』があり、病気やけがで初めて医師等の診療を受けたときに国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金保険に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求できます。
なお、障害厚生年金に該当する状態よりも軽い障害が残ったときは、障害手当金(一時金)を受け取ることができる制度があります。 また、障害年金を受け取るには、年金の保険料納付状況などの条件が設けられています。
(傷病手当金に関する関連リンク)
障害年金の種類
障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があります。
また、障害基礎年金には
- 通常の障害基礎年金
- 20歳前傷病による障害基礎年金
- 経過措置による障害基礎年金
- 特例措置による障害基礎年金
があります。
障害基礎年金
障害基礎年金は、初診日に次のアまたはイに該当するものが、障害認定日(初診日から1年6ヵ月を経過した日、または、その期間内に傷病が治った日)に障害等級1級または2級の障害の状態にあるときに支給されます。
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- ア 被保険者であること (初診日が国民年金加入期間であること)
- イ 被保険者であった者で、日本国内に住所を有し、かつ60歳以上65歳未満であること (初診日が日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満の方で年金制度に加入していない期間であること)
※受給権者が障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなったときは、その障害の状態に該当しない間支給が停止され、亡くなった場合は失権(権利が消滅)します。
20歳前傷病による障害基礎年金
初診日が20歳到達日前にある傷病については、障害認定日以後に20歳に達したときは20歳に達した日(20歳に達した後に障害認定日がある時はその障害認定日)に、障害等級1級または2級の状態にある時は、障害基礎年金が支給されます。
また、初診日が20歳到達日前にある傷病について、障害認定日以後に20歳に達したときは20歳に達したとき(20歳に達した後に障害認定日があるときは、その障害認定日)には障害等級の1級または2級の障害の状態にない者が、その後その障害の程度が増進し、65歳に達する日の前日までに障害等級の1級または2級の状態に該当したときは、請求することによって、障害基礎年金が支給されます。
20歳前の傷病による障害基礎年金については、本人の所得制限および公的年金受給制限があるなど、原則の障害年金と比べて一定の制限が設けられています。
ー 支給停止となるような場合 ー
受給権者が障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなったときは、その障害の状態に該当しない間支給が停止され、亡くなった場合は失権(権利が消滅)することは、原則の障害基礎年金と同様ですが、その他でも受給権者が下記のいずれかに該当するときは、該当する期間は支給が停止されます。
- 恩給法に基づく年金給付、労働者災害補償保険法の規定による年金給付その他年金給付であって政令で定めるものを受けていることができるとき
- 刑事施設、労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されているとき
- 少年院その他これに準ずる施設に収容されているとき
- 日本国内に住所を有しないとき
ー 原則として設けられている所得制限 ー
- 前年の所得が3,704,000を超え4,721,000円以下の時2分の1が支給停止となります。
- 4,721,000円超の時は全額が支給停止となります。
経過処置による障害基礎年金(平成6年の特例)
以前は障害基礎年金などの受給権者が障害等級3級以上に該当しなくなった場合であってその後3年経過すると受給権が消滅することとされていましたが、平成6年の法改正によってこの取り扱いが改められ、障害等級の3級以上に該当しなくなった場合、その後3年を経過しても65歳に達するまでは受給権は消滅させずに支給停止とされることとなりました。
そこで、改正法の施行前に障害等級3級非該当で3年経過して失権した方を救済するための経過処置が設けられ、同一の傷病によって障害等級の1級または2級の状態に該当する者、あるいは施行後に65歳に達する日の前日までの間に同一の傷病によって障害等級の1級又は2級の状態に至った者は、障害基礎年金を請求できることとなりました。これを経過処置による障害基礎年金と言われています。
特例処置による障害基礎年金
昭和61年4月1日前の旧法の障害年金については、現行の障害基礎年金の支給要件と異なっていました。新法になり支給要件が改正されたことから、旧法時代に支給要件を満たさなかった者であっても現行の障害基礎年金の支給要件を満たす場合には、特例的に福祉的意味の強い年金を支給することとし救済を図ることにしました。これを特例処置による障害基礎年金といいます。
特例処置による障害基礎年金については、初診日が昭和36年4月1日から昭和61年3月31日までの間にある場合に限られ、かつ、その傷病により障害年金などの受給権を有したことがないことなどの要件を満たすことが必要です。また、特例処置による障害基礎年金については20歳前傷病による障害基礎年金を支給することとされていることから、20歳前傷病による障害基礎年金の支給停止の規定が適用されます。
障害厚生年金
障害厚生年金
障害厚生年金は、厚生年金の被保険者である間に初診日のある疾病や負傷により、障害認定日において一定の障害の状態(障害等級の1級、2級、または3級に該当する程度の障害の状態)にあるときに支給されます。
障害厚生年金は、障害基礎年金にはない障害等級3級が設けられており、さらに3級よりも軽度の障害の状態に該当する場合には、障害手当金という一時金が支給されます。
1級または2級の障害厚生年金については、原則として同一の事由による同じ等級の障害基礎年金と併給して受給することができます。
受給権者が障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなったときは、その障害の状態に該当しない間支給が停止され、亡くなった場合は失権する点については障害基礎年金と同様です。
障害手当金
厚生年金に加入している間に初診日のある病気・けがが初診日から5年以内に治り、3級の障害よりやや軽い程度の障害が残った場合、年金の代わりに一時金として、障害手当金を受給することができます。ただし、障害基礎年金を受け取るのに必要な保険料納付要件を満たしていることが必要となります。
また、次のような場合には障害手当金は受け取ることはできません。
- 国民年金、厚生年金を受け取っている場合
- 労働基準法または労働者災害補償保険法等により他の障害補償を受け取っている場合
障害手当金は、症状が固定した場合(治った場合)に支給されるものなので、その障害が重くなることは考えられていません。
もし、障害手当金を受給した障害が重くなった場合は、障害手当金の認定が誤っていたということになります。
その場合は、障害手当金の認定が取り消され、事後重症による障害厚生年金が支給されることもありえます。
障害共済年金
平成27年10月1日に「被用者年金一元化法」が施行され、これまで厚生年金と共済年金に分かれていた被用者の年金制度が厚生年金に統一されました。
共済組合の障害給付は平成27年10月1日に被用者年金一元化が行われたことから、公務外障害共済年金は障害厚生年金となり、障害一時金は廃止されました。
過去の制度に該当するかた方がいるためとりあげています。
障害共済年金は、共済組合員である間に初診日のある疾病や負傷により、障害認定日において一定の障害の状態(障害等級の1級、2級、または3級に該当する程度の障害の状態)にあるときに支給されます。