目次
1.基本情報
- 年代: 50代
- 障害の種類: 末期腎不全(糖尿病性腎症)
- 年金の種類:障害厚生年金
- 等級: 2級
2.申請前の状況
請求人様は、平成18年頃から糖尿病を指摘され、治療を開始していました。しかし、平成23年に転居を機に、糖尿病治療を自己中断してしまいました。
その後、令和2年5月に外科を受診した際に糖尿病の加療が必要とされ、内科へ転院し、加療が開始されました。しかし、腎機能の低下が進行し、eGFR(推算糸球体濾過量)が低下したため、泌尿器科へ紹介されました。令和2年7月にはうっ血性心不全を発症し、入院加療を受け、さらに腎代替療法のため転院しました。最終的に、令和2年8月から緊急血液透析を導入することとなりました。
透析導入後は、週に3回、1回4時間の血液透析が必要となり、生涯にわたる透析治療を要する状態となりました。身体所見としては浮腫や貧血が見られましたが、自覚症状や長期透析による合併症は認められませんでした。日常生活活動能力は、軽度の症状があり肉体労働は制限されるものの、歩行や軽労働、座業は可能とされていました。
3.申請の経緯
請求人様は、末期腎不全による障害の状態にあるとして、事後重症による障害給付の裁定請求を行いました。しかし、請求人様の「末期腎不全の原因である糖尿病の初診日」を確認できないとして、裁定請求は却下されました。
このケースでも、「初診日の特定」が大きな争点となりました。請求人様は平成18年6月頃頃を初診日と主張していましたが、当初受診した医療機関は既に廃業しており、カルテ等の診療録を提出することができませんでした。代わりに、以下の参考資料を提出しました。
- 事業所の健康診断結果(平成19年4月実施分)
- 当時使用していた血糖値測定器等の写真(製造年月、製造番号が印刷されたもの)
保険者は、健康診断結果に「要治療継続 糖尿病検査」と記載があることから、健診日以前から治療を受けていたことが窺えるとし、請求人主張の初診日を確認できないと主張しました。
4.当事務所のサポート内容
初診日証明が極めて困難な状況において、当事務所は請求人様の諦めない気持ちに寄り添い、以下のサポートを行いました。
間接的な証拠の徹底的な探索
請求人様の手元に残るわずかな手がかり(血糖測定器の製造年月や健康診断結果など)に着目し、これらが初診日を裏付ける強力な証拠となり得ることを発見しました。
健診結果の解釈に関する専門的助言
「要治療継続」といった一般的な健康診断の所見が、必ずしも治療開始時期を示すものではないことを、法的かつ医学的な観点から明確に主張しました。
論理的な主張構成
廃業した医療機関のカルテがない中で、間接的な証拠と請求人様の病歴・就労状況等申立書の内容が矛盾しないことを論理的に構成し、審査機関に提出しました。
再審査請求手続きの代理
却下処分に対し、不服申し立て手続き(審査請求、再審査請求)を代理し、上記の詳細な証拠と主張を提出しました。
5.結果と現在の状況
社会保険審査会は、提出された血糖測定器の製造年月や健診結果を重要な証拠と認め、以下の点を指摘し、請求人様の主張を支持しました。
- 健康診断記録の「要治療継続」という記載は、必ずしも治療中であることを意味するものではなく、治療を続けるようにという一般的な注意喚起である場合が多い。
- 請求人が提出した血糖測定器の写真から、その製造年月が平成18年5月であることが確認された。
- 平成19年4月の健康診断結果で「糖尿病検査:要治療継続」とあった。
これらの客観的な資料を総合的に判断し、請求人様が主張する平成18年6月頃の初診日に信憑性が認められるとして、平成18年6月を初診日と認定しました。
この初診日において、請求人様が厚生年金保険の被保険者であり、所定の保険料納付要件を満たしていることも確認されました。
人工透析療法施行中は、障害認定基準において原則として障害等級2級と認定されるため、請求人様には障害等級2級の障害給付が支給されるべきであると判断され、当初の却下処分は取り消されました。
認定結果
障害厚生年金2級の支給が決定
受給額
年額120万円(障害厚生年金2級)
生活の変化
生涯にわたる透析治療が必要な状況において、障害年金の受給は経済的な大きな支えとなります。医療費の心配が軽減され、日々の生活により安心感がもたらされたことで、より安心した環境での体調管理に集中できるようになりました。
6.申請を検討している方へのメッセージ
「初診日の資料がないから無理」と諦めてしまう前に、ご自身の手元にある古い健康診断結果や、病状に関連する医療機器の購入履歴、ご家族の証言など、どんなに小さな情報でも構いません。それらが初診日の特定につながる貴重な手がかりとなることがあります。
特に糖尿病性腎症のように、慢性疾患が進行して透析に至るケースでは、初診日がかなり昔になることも珍しくありません。障害年金 申請代行の専門家は、そうした潜在的な証拠を見つけ出し、申請を成功させるためのサポートを提供します。
