目次
1.基本情報
- 年代:50代
- 障害の種類:正常眼圧緑内障(末期)
- 年金の種類:障害厚生年金
- 等級:3級
2.申請前の状況
請求人様は、正常眼圧緑内障(末期)平成10年春頃と主張していましたが、この申立ては「現在の提出書類では確認できない」という理由で却下処分を受けていました。
請求人様は「社会的治癒」の概念を主張し、発病から数年間の無受診期間中に通常の就労と社会生活を送っていたことを示唆していました。しかし、その後の視野障害の顕著な影響により、転職を繰り返すなど、就労に支障をきたす状況となっていました。
3.申請の経緯
原処分に対し、請求人様は初診日を改めて平成22年4月であると主張しました。初診日の証明については、以下のような困難と工夫がありました。
診療録の廃棄
初診とされた医療機関のカルテ等の診療録が廃棄されており、直接的な証明書が取得できない状況でした。
曖昧な申立てと保険者の反論
当初の「平成10年春頃」という申立ては「本人申立て」に基づく記載であり、保険者側はこれを理由に初診日を認めませんでした。保険者はまた、請求人様が提出した「病歴・就労状況等申立書」の過去の治療歴の記載を根拠に、今回の主張する初診日を否定しようとしました。
この課題に対し、請求人様は以下の客観的資料を提出しました。
医師作成の受診状況等証明書
「前医にて両眼緑内障といわれていたが通院は不規則であった。平成22年4月当科初診」という記載に加え、別の証明書では「健康診断で眼底異常を指摘され」という具体的な経緯と「診療録より記載したものです」という記載が確認されました。
審査会は、この「健康診断で眼底異常を指摘され」という記述が5年以上前(平成10年頃)の初診時の診療録に基づくものと認められると判断しました。
社会的治癒に関する資料
長期の無受診期間中に、通常の就労をしていたことを示す年金加入状況や標準報酬月額の月別状況表を提出しました。
4.当事務所のサポート内容
この事例では、請求人様の代理人として関与し、複雑な初診日の証明と「社会的治癒」の主張を行いました。
初診日の再特定と客観的証拠の追求
却下された後に、改めて正確な初診日(平成22年4月)を特定し、その証明のために追加の医療機関資料を収集・提出しました。
特に、5年以上前の診療録に基づく記載がある受診状況等証明書が、初診日認定の決め手となりました。
「社会的治癒」の概念の主張と裏付け資料の提示
無受診期間中に請求人様が通常の社会生活と就労を行っていたことを示す年金加入状況や収入の記録を提出し、保険者に対して「社会的治癒」の概念を適用し、当該期間を治癒期間とみなすべきであると主張しました。
これは、保険者側の「自己都合の治療中断」という反論に対し、請求人の権利を保護する重要な論点となりました。
保険者意見への詳細な反論保険者意見への詳細な反論
保険者が却下理由とした当初の「本人申立て」の曖昧さや、他の診療履歴の解釈について、提出された医療機関作成資料の証明力の高さと、時系列に沿った整合性のある考察を求め、却下理由の不当性を主張しました。
複雑な事案の論理的な整理
複数の医療機関にわたる長期の診療履歴や「社会的治癒」の主張といった複雑な要素を含む事案を、時系列に沿って整理し、申請内容の正当性を説得的に説明しました。
5.結果と現在の状況
審査会は、平成22年4月を本件傷病の初診日と認めるのが相当であると判断し、原処分(却下処分)を取り消す裁決を行いました。これにより、保険者は請求人様の障害の状態について判断すべきであるとされ、障害基礎年金および障害厚生年金の受給に向けて大きく前進しました。
裁決までには、申請から約1年8ヶ月の期間を要しました。
6.申請を検討している方へのメッセージ
初診日の証明は、特に長期にわたる病歴や、カルテが廃棄されてしまったようなケースでは、非常に困難を伴います。
このような場合、「社会的治癒」という概念が適用できる可能性を検討するなど、専門的な知識と経験が不可欠です。
障害年金申請代行の専門家である社会保険労務士は、今回の事例のように、困難な状況においても諦めずに、客観的な証拠を多角的に収集し、法的・医学的な解釈に基づいた論理的な主張を行うことで、受給の可能性を切り開きます。
複雑なケースほど、一人で悩まず、ぜひ専門家にご相談ください。障害年金受給事例の経験を活かし、あなたの申請を全力でサポートいたします。
